2016年01月12日

「北陸新幹線の窓に目を見張る」

 
 ― からだの変調を押さえた新技術を確認―
昨年の暮れ、29日に東京駅に向かい、今春開業した北陸新幹線を利用しました。東京⇔金沢間が最短2時間28分。東京を出ると上野、大宮、長野、富山の4駅しか停車しません。その北陸新幹線は、従来の新幹線と比較して、車両環境がどう性能アップしているのかが、今回最大の関心事でした。

〈写真1.東京駅を発車する北陸新幹線W7の姿〉

(1) 中耳減圧を感じない車両環境で、乗客への配慮
冬になると、筆者は電車や新幹線・バスでも、窓際席を避けて通路側の席に座るようにしています。今回も通路側のD席に座ることにしました。窓際E席には先客がおりました。窓からの寒さを気にしてか、コートを脱いではいませんでした。筆者の隣の先客である若い男性は、コートを窓側の帽子掛けにつるし、すでに目をつむっておりました。

〈写真2.東京駅発車前W7の車内〉

 高崎の先に碓氷峠が有り、長野新幹線でも同じ海抜約1000m地帯をトンネルで通過します。この時気圧の変化、急激な減圧で耳の調子がおかしくなりますが、北陸新幹線では全く減圧を感じませんでした。
 長野までの1時間25分、外は真っ暗でどこを通過いているのかが全く判りません。中耳減圧による気分の変化を感じない気密性の良さを感じました。この快適性であれば、かなりの利用者が航空機による北陸への移動から、北陸新幹線に移行していくことでしょう。
 昼間であれば、関東平野から浅間山を右に望み、今ならまばゆい銀世界に目を細め、厳しい冬の信州の自然を感じるなど、季節それぞれの豊かな自然の移ろいを感じての移動は快適で、癒される風景が次々と映ることでしょう。
 客室照明(LED照明)や換気は個人差での調整がまったく不可能で、最適室内空間をコントロールするようつくっているのでしょう。トイレの臭気もかなり改善されていました。ようやく、新幹線も日本のトップランナー住宅環境レベルにまで到達したのかと、感心しました。

(2) ペアガラス採用―安全・快適な車両室内を構築

〈写真3.W7の証 ロゴマーク〉

長野で乗客が3割ほど降り、空席が目立ちはじめました。ここで、東日本から西日本にJR乗務員の交代です。ここからが速いのです。富山まで1時間弱です。日本海を望めるところまではほとんどトンネルですので、北陸特有の悪天候による遅れや運休もなく、安全と快適さは格段に向上しました。
 真っ暗闇でも厳寒な波しぶきを上げる日本海を覗きたくて、空いた窓際に移動しましたが、警戒した窓側の冷気が気になりません。窓ガラスに手を触れても冷たさをそれほどには感じません。
 ガラスの構成を変えてあるのかなと窓際を覗くと、金属セパレート材の存在が明らかになりました。
さらによく見ると「PAIRGLASS SANS SR19 AGC ….」の刻印を右上隅に(写真4)を認め、すべての窓にありました。
 夜にもかかわらずブラインドを下げてみると窓ガラスからの冷輻射が遮られて「フワッ」と温かさが漂いました。ブラインドを使用すると陽射しを遮るためだけでなく、寒さ対策にも役立つことがこの動作で確認出来ました。


〈写真4.北陸新幹線の窓周辺、2015.12.29.21:49〉


 開口部ガラスの客室内周辺には、黒いパッキン材を認めます。快適な北陸新幹線の乗り心地の理由が、納得できました。開通開業時には、運転席などの曲面ガラスが高岡のガラス製造技術に支えられているとは聞いていましたが、やはりペアガラスの使用と窓周辺部材の採用で、こんなにも快適性能が向上したことに納得です。
 
(3) 木質採用がさらに増加―住宅と同じく健康・快適な車内を構築
この窓が気になり、早速ネット検索を試みました。住宅に採用しているペアガラスのレベルでは無い仕様です。外側は強化ガラスと高性能ガラスの合わせガラスによる安全対策が施されていると公開されていました。航空機の窓ガラス仕様とは異なり、新幹線は高速での風圧変化にも安全に設計されていることを知りました。外気温の変化だけでなく、取得熱にも対応していることでしょう。
 古くから走っている客車には、炬燵列車やダルマストーブ列車が地域の鉄道で現在も運行しています。九州では高級木質調度品を車両全体に採用し、行列のできる人気を得ています。ともあれ、金沢からの帰路には、在来線の特急「しらさぎ」と東海道新幹線「ひかり」で移動し、快適性と窓性能の違いを確認してみました。


〈写真5.東海道新幹線の窓周辺、2016.1.23:04〉

 筆者の乗車席は通路側。北陸本線の「しらさぎ」の窓際の寒さは、予想通り以前のままでした。東海道新幹線の窓は、写真2のように大きさは北陸新幹線と同じですが、ガラスは2枚仕様のように見えます。車内温度はかなり異なるでしょうが、窓表面温度の接触体感温度が随分と違うことは明確です。ブラインド使用による保温効果も効きがよろしくないようです。
 新幹線の窓も進化しており、開通時には幅広で大きかったのですが、現在はかなり小さい窓になり、ガラス構成もかなり変えているようです。(写真1.東海道新幹線が16番線に望めます)
 日本の住宅は、東京オリンピック開催(1964年)以降、木質窓枠がアルミ枠に取って代わられました。戸袋もすたれて、使われなくなりました。このことで、密閉性能は高まりましたが、外気からの断熱性能を低下させ、結露し易く、住宅の劣化は窓周辺から目立ちました。
 北陸新幹線に素晴らしい窓が使用されたことで、防火性能や風圧安全性能アップの技術開発もさらに進むことでしょう。このことで、住宅の窓の性能も、今後は外部建具としての木製窓枠開発や樹脂製窓枠の普及、より機能性を上げた気密性能や断熱性能や輻射熱効果、さらには竜巻などの風圧や衝撃対策の安全性能も加味した新製品が応用開発されていくことでしょう。
 北陸新幹線のより革新的な窓を通して、住まいづくりへのより安全で安心な技術開発への展望を期待し、新年の抱負といたします。
 余談ですが、北陸新幹線「かがやき」は東京を午後出発しても、一仕事を終えてから、富山や金沢で北陸の海の幸に舌鼓を打ってのち、その日の夜のうちに日帰り出来るというエリアになりました。関西方面からのお客さんは一泊して楽しまれているようです。


〈写真6.北陸の海の幸、香箱蟹 & 蟹面)

2015年12月30日

レポート3 異常気象もなんのその。からだに無理をかけない健康住宅を検証

 
 ― 夏のジトムシ熱帯夜が変わる。サラフワ空気で安眠の住まいづくり ―

今秋のトピックスでは、「からだにやさしい空気感を、奈良市中の健康住宅で体感」という記事でご紹介しました。奈良県では、他の外断熱施工例として、約15年前に天理市周辺で2棟建てられています。熱帯夜や底冷えのする盆地気候特有な土地柄にもかかわらず、その後快適に過ごせるこうした家づくりは、なかなか普及していません。まるで、「快適」を求めることに、罪悪感を抱いているかのようです。にもかかわらず、1軒で5、6台と部屋の数ほどエアコンを設置し、無駄なエネルギーを浪費している、「対処療法的」住環境を良しとする現実があります。エネルギーを無駄遣いしないでお財布にやさしく、しかもひとのからだにも住いにも「快適」をもたらす家づくり。そんな住環境への意識改革が、こうした盆地風土にこそ広がってほしいものです。

(1) 夏対策を意図しない家づくりでの現実―不健康エアコン冷房の見える化
 夏対策は、建物の中でエアコン冷房すればできるというものではありません。
従来の住いは、断熱材の使い方を知らない施工のため、直接外気が侵入し、天井や壁が暑く発熱(伝導)してしまいました。からだが触れなくても輻射で熱く感じる部屋でエアコン冷房し、冷風の吹き付ける風を受けて、からだの表面だけが冷えるのを喜んでいる、というのが夏の暮らし方として一般的です。(写真1.参照)


<写真1.エアコン冷房時のサーモグラフィー(1990、押出発泡断熱材工業会提供)>
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 断熱材は、正しく施工してないと、写真1.のようにエアコンから28℃の冷風が噴出しているにもかかわらず、体表温度33℃から35℃になるだけです。室内の壁面は31℃から33℃を観察されています。天井の表面温度35℃と、輻射熱を放射し、冷風の届かない人の風下では31℃以上に発熱しています。
 こんなエアコン冷房の風に晒されていると、からだに変調をきたし、頭痛や腹痛を起こし、自立神経失調症を招いて、体調を壊しかねません。文明の利器という素晴らしエアコン冷房も、使い方。断熱材の効果がない住宅や建物では、からだに良くない室内環境をつくってしまいます。

(2) 夏対策をしない家での小屋裏の現実 ―異常発熱の見える化
 ではどうするのか。今から10年前の2005年。残暑厳しい9月1日、奈良県内2棟の住宅で、サーモカメラによる測定を実施しました。測定時間は外気が最高気温になる午後13時から15時過ぎまで。実際の外気温は、34℃に達する快晴日でした。屋根表面は、60℃を超える温度に発熱しているのが明らかです。
 屋根表面は、外気温よりさらに、20℃~50℃以上発熱しているのです。この現象は、今後真夏日や猛暑日などの異常気象でまだまだ気温上昇が予測されています。今日、夏対策はこれからの住居づくりには欠かせません。

<写真2.一般住宅外観とサーモグラフィー(天理市2005.9.1,12:25 ,晴天)>

 従来施工の一般住宅外観を、写真2 に写しています。そのサーモカメラ像を並列し、温熱データを「見える化」で示しましたので比較してみてください。隣家のカーポート屋根や軒裏は、40℃に発熱しています。外壁面は34℃ぐらいでしょう。住宅の北側や日陰の壁面などが、外気温を示しています。
この一般家屋の屋根裏を、写真3にサーモグラフィーと対比して表示してみましょう。外気温が34℃なのに、屋根裏(小屋裏)温度は41℃と体温以上です。これが写真1で示したのと同じように、からだによくない室内温度の天井輻射熱の原因になります。

<写真3.一般住宅屋根裏とサーモグラフィー(天理市2005.9.1,13:34 ,晴天)>

 屋根裏の野地板は、50℃以上のオレンジ色~赤色を示しています。梁や桁の構造材は、40℃台の黄色。梁の下側(裏側)は30℃を示し、小屋裏空間に頭や首を入れると、たちまち不快な暑い上昇気流と高熱の輻射熱を感じます。

(3) 夏対策を意図した家づくりでの現実 ―丹波の健康住宅が語る
 近畿圏の丹波・柏原の住まいの今年度データを、表1「晩夏の丹波の住宅データ」として示しました。これは、13年前に完成したもので、建て主は今までにない快適な生活に満足しておられます。とくに、屋根裏ロフトの実測データから、家全体の室温環境をご想像してみてください。その結果が、13年間のデータ記録からうかがうことができます。

〈表1. 丹波の健康住宅の晩夏の温熱環境測定データ〉


(4) 夏対策をした住まいの見える化が示すもの ―適切な輻射熱の住まい

夏に屋根の表面は50℃以上、を考慮する
 写真4の外観は外断熱で夏対策を施した1棟と、その周辺の住宅を、サーモグラフィーで確認しています。隣り合う棟の外観では、室内温度環境がどうなっているかは不明です。屋根の発熱も外壁の発熱も、3棟とも同じです。外気温34℃で屋根の表面は50℃以上に発熱していることを示しています。
 近年デザイン上の理由で、屋根の形状も寄棟が好まれるようになっています。しかしこれが、小屋裏の発熱をますます蓄熱してしまい、夏暑い家になりかねません。 
 我が国の木造建築は、夏を旨として通風を重んじていました。窓の開閉で通風を採っていると、一般的にはよく言われますが、果たしてそのような暮らし方が本当に可能で、実現できているでしょうか。
 写真4. の3棟に共通しているもう1つは、2階のベランダの設置です。これは、最悪にも暑い家をつくってしまっているだけではありません。このベランダが、立派な集熱装置になっていることにお気づきください。

<写真4.外断熱住宅外観とサーモグラフィー(天理市2005.9.1,14:04 ,晴天)>

夏のベランダは発熱体、に考慮する
 2階ベランダは、サーモグラフィーから50℃以上に発熱していることを示しています。ベランダに面した掃出し窓を開いても、ひんやりとした気持ちのいい風を採り込むことは、現実無理でしょう。蓄熱された暑いベランダからの熱気(高温の輻射熱)が、ひんやりした風を阻害します。
ベランダでは、よく布団干しに使っている光景が見られますが、風を入れようと掃き出し窓を開けるということは、恐ろしいことです。また、陽射しで焼け込んだ暑い布団を室内に取り込むと、室温を上昇させることになりませんか。
 本来は、このバルコニ―の通風を良くして、掃出し窓の断熱性能も上げ、輻射熱を採り込まない施工レベルに上げる必要があるのですが、その設計がなかなか見受けられません。逆に、外気が冷える時期には、日照での日射取得を上げる必要があります。
近年、省エネ志向の住宅づくりには、季節を考慮した多角的視点に基づく検討事項が、沢山あるのです。
 健康的な家づくりの屋根裏の状態を、写真5.に示しましたのでサーモグラフィーと対比してみましょう。


<写真5.外断熱住宅屋根裏とサーモグラフィー(天理市2005.9.1,14:34 ,晴天)>


夏の屋根・小屋裏対策、を考慮する
 小屋裏(屋根裏)に体温36℃の人が入り込んでも、標示温度はやや低く、この場所が暑くなく快適であることをサーモカメラ像は的確に捉えています。こんな「見える化」が、10年も前、今から27年前の1988年にできていますが、未だに一般消費者の皆さんにまで常識化されていないのが現状です。
 夏を快適に過ごす住まいには、屋根断熱や天井断熱の必要十分な設計が示され施工されているのが、このひとと住いの健康を保障するために必要なのです。屋根裏の照明器具は、放電で触れば火傷するくらい発熱します。60℃以上68.8℃にも発熱し、白く高温に輝いています。屋根裏の野地板は30℃を少し超えるくらいで、なんと人の顔面温度よりも低い温度を示しています。
 野地板の外側には断熱材が張り込められて、いわゆる「外張り断熱」「外断熱」という工法です。和瓦などの屋根仕上げ材の違いはありますが、50℃、60℃を超えるほど高温になる屋根発熱は、屋根材の適切な葺き方(屋根材の張り込み方)ができていれば、小屋裏に入り込む余地などありません。
 ここが屋根の夏対策を採った家である証拠として、サーモグラフィーや温度測定データで示すことができるのです。13年目の丹波の建物でも、2階やロフトが28℃以下です。奈良市の家(全延べ床面積約108㎡(32坪))でも、たった1台の僅かなエアコン冷房や除湿運転で、住む人にやさしい2階の小屋裏やロフト空間になり、階下の生活空間もそれ以下の温熱環境を形成できています。

(5)伝統・町屋リノベーションに、新たな機能を付加して引き継ぐ喜びを
 ところが、折角のエアコン冷房で熱中症予防だと思っていても、住まいによっては、壁や天井から輻射熱を浴びせられ、温度差の極端な冷房風が不快なところから、「使わない」、「嫌い」という高齢者の方々が見受けられます。
 また、極端な冷房風により体調を崩したり、自律神経失調の症状を訴えていることもあるのです。しっかり適切な断熱材を活用し、外部の温度に影響されない天井や壁をつくって、わずかなエアコンエネルギーを消費するだけで、からだにやさしい住まい、不必要な冷暖房エネルギーを必要としない住まいづくりを、当たり前としたいと願っています。
 奈良や京都、日本全国各地域の古い町屋リノベーションも、上記のような観点を加えて、形だけを残すのではなく、新たな機能を付加する改修で、ひと、家、環境の三方が喜ぶ住まいを提供したいものです。それが実現できれば、とかく暗い・汚い・暑い寒いと嫌われがちな「伝統」の家づくりも認識が変わり、さらに愛され大切に引き継がれると考えます。


2015年12月22日

レポート2 床下を収納スペース:納戸や乾燥室としての活用

床下を収納スペース:納戸や乾燥室としての活用
 11月26日に見学した、奈良市中の健康住宅。その床下はとても快適な空間です。この奈良の住いの他に、茨城県日立市中の健康住宅でも、こうした快適で健やかに住みこなす、新たな試みがなされています。この事例をご紹介します。この事例は、平成23年度ゼロエネルギー住宅建設補助金交付をされています。(残念ながら、この住まいの温熱環境データは現在のデータがないので、納戸や洗濯干場として活用されている現状を報告します。)
  


〈写真1.平成23年度ゼロエネルギー住宅建設補助金交付Y邸(茨城・日立)〉

(1)楽しさ広がるステップ階層住宅で、住いの室温バリアフリーを実現
 この住いでは、居住スペースの温度が冬季でも21℃から23℃で保たれており、中3階の 屋根裏も寝室として活用しています。もちろん、1階のトイレや浴室も21℃ぐらいに保たれています。
この高性能住宅を支えるカギは、開口部です。写真2は居間の木製窓のサーモグラフィーです。
すべての開口部はガラスが3枚構成のトリプル仕様です。


〈写真2.リビングの窓(木製サッシュ)周辺のサーモグラフィー
(2015.12.12、16:24撮影)〉


 日差しを受けている窓の木製枠は、27.5℃です。居間壁面温度は1.8mの高さで26.1℃と日射取得効果が反映されています。
 夏対策の設備は、中3階のエアコン冷房を活用。冬季の暖房は、1階床下の基礎土間空間(納戸)に設置した、エアコン暖房運転(写真3)を活用しています。


〈写真3.床下空間のエアコン暖房稼働時のサーモグラフィー
(2015.12.16撮影)〉

 この暖房に使用しているエアコンの設定温度は25℃で、全館21℃の室温バリアフリーが可能です。この床下空間サーモグラフィーでは、24℃(収納ケースの裏側)から25.2℃(基礎コンクリート内面)の高温ですが、これは暖房熱源の稼働時です。エアコン吹き出し口は30.1℃です。柔道着などの厚物洗濯干場として活用しており、洗濯物が27℃前後にもなっています。
 洗濯物の水分は高温時の過乾燥を和らげ、常時換気も維持されていることから、湿気は徐々に屋外へ排出されます。このエアコン暖房を主体に、2階寝室でも1階居間でも、屋内であればどこに居ても21℃の室温が保たれ、部屋間の温度変化や過乾燥を感じないのです。床下空間から中3階の屋根裏空間まで、室温バリアフリーが実現しています。その皮膚感覚は、大変ストレスがなく快適なものです。


〈写真4.床下への階段と1階床のサーモグラフィー
(2015.12.12 16:24撮影)〉

 床下空間から木製の階段を上がりと、1階につながります。写真4.のように床への陽射し、インディアンサマーといわれる「太陽の恵みを感じる空間です。測定時刻的には、そろそろ期待できない夕方です。しかし、ブラインドをまだ開けていますので、屋外への放熱が始まり、床面は輻射熱27.0℃を示しています。開放的な従来の断熱性能を考えない日本の住まいは、午後の3時過ぎともなれば「日向ぼっこ」の出来ない時間です。
 体にやさしいこれからの住いは、このように窓などの開口部をできる限り性能を上げなければならないことも、実測データから「見える化」されるのです。太陽の陽射しという波動エネルギー(光線)の恵みを、蓄熱した室内側の壁や床から少しずつ柔い熱(輻射熱)として放出し、室温を21℃に保ちます。快適に感じるのは、この柔い熱が我々のからだにやさしく放熱作用している(輻射している)からです。遠赤外線の作用と似ています。
 我々の身体を構成している水分などが、太陽の陽射しエネルギーの輻射熱にいかに敏感な蓄熱機能を持ち、体温を維持しているか教えてくれるとともに、温かいという知覚を認知しているのです。我々のからだも体温36℃を有し、住まいのなかでは大変な熱源として輻射熱を放出しています。
日々炊事・洗面に使う給湯やシャワーや浴槽の湯も、熱源としてかなりの熱量になります。このことを考慮した家づくりは、わずかなエネルギーを大切にする住まいを建設しなければならないことを教えています。

(2)日射取得熱を活用し、ペットボトル水で蓄熱と放熱
 写真5をご覧ください。冬季の陽射しを活用してダイレクトゲインによる床蓄熱を設計に組み込んだ、ゼロエネルギー住宅です。取得熱を設計想定以上に発揮させるため、今は熱容量の大きい水を活用するため、ペットボトル水を床に転がしてあります。


〈写真5.ダイレクトゲイン部【タイル床】のサーモグラフィー
(2015.12.12、16:23撮影)〉

 撮影が冬至を迎える12月12日夕方。午後4過ぎのため、蓄熱床温は26.1℃で、蓄熱水の温度が23.7℃と室温に比べて低くなっています。ペットボトル容器表面の室内への放熱面積が大きいので、蓄熱床より低い表面温度を示しているのです。

 この温度差が、放熱取得熱とそのダイレクトゲイン蓄熱の差の「見える化」で、測定温度で確かめることができます。この寒い時期に陽射しがあると、普段から、この午後4時以降の時刻になると、暖まった温度を保つために開口部ブラインドを下ろし、屋外への放熱を防ぐという住まい方を、ご家族皆様が徹底しているとのことでした。
 高性能の木製枠と樹脂製枠ですから、表面温度が21.7℃で室温にかなり近いです。すべての窓が高性能なトリプルガラスでμ値(ミュー値)の小さい開口部ですので、サッシュ枠が高温発熱していません。初めに紹介した写真2.では、ブラインドを下ろしていないのでサッシュ木部の表面温度は、高くても27.5℃を観察されているにすぎません。
 1980年代から、断熱方法を指導するのに活用していたこのような画像(サーモグラフィー)が、性能の発揮している住宅かどうかを検証するツールとして活用でき、性能を確認できる時代が到来しました。高額な開口部の性能が「見える化」され、温度測定値も計測できて、設計段階での性能表示通りの建物かどうか、省エネ住宅かどうかを確認できる時代なのです。


(3)カビの繁殖しない床下空間を備えた健康住宅の見える化
 この住宅は断熱性能の高い設計に基づいて施工された、2年目の住いです。再度、床下空間を覗いて診ましょう。


〈写真6.床下空間のライフライン(換気ダクトと給水給湯管)のサーモグラフィー
(2015.12.16撮影)〉

 写真6.はこの家の「ライフラインの見える化」したもので、暖房エアコンから離れた床下空間です。この天井上に水回りの台所や浴室が配置されています。
いまでは住宅の耐久性は、水回り設備の結露対策と漏水(雨漏れ)対策、見えない壁の中や床下の状況で決まることが一般的です。カビの生えた床下、天井・壁面のある家で暮らしていると、大変な健康障害を起こすことがどんなに多いかは言うまでもありません。
 このように床下が十分に乾燥し、カビの繁殖が抑えられ、16℃以上に保たれ、結露の発生しない床下空間が保障されてこそ、健康住宅なのです。

 この家では常時換気または24時間換気という換気システムにより全室換気されています。無防備になりがちな寝室をはじめ、各部屋の排気がダクトで集められて床下排気ダクトとして屋外に排出されています。その床下ダクトの表面温度が18.1℃と表示観察されます。体温36℃の住む人の呼気として廃棄した老廃物や水分などを含む室温21℃の汚れた空気は屋外に排出される時に18.1℃以下になっています。この約3℃の差は、外気の冷たい空気に回収されていることを意味しています。
 我々の身体から排泄排出された水分(水蒸気)は、連続運転の換気システムで室内に溜まらない仕組みがここにあります。このために、床や壁面や天井などでの結露、さらには壁中の内部結露も発生しない仕組みを兼ね、熱エネルギーも回収して給気の新鮮空気を温めています。

(4)健康住宅は、床下空間16℃以上保たれることが前提
 写真6.には、給湯給水管も床下の最下部の床面(16.0℃)を走っています。建物外部より導入された給水管の表面は14.2℃。断熱被覆された給湯管の表面は、15.6℃を示しています。このことで、給水管が異常に温まらないような配慮も確認できます。基礎コンクリートの外側で、しっかりと断熱された基礎外断熱の床下空間は、15.6℃を示しています。浴室の浴槽下部からは、40℃から21℃までに冷める熱が床下空間を温め、放熱されています。

 このように冬季でも、室温21℃で快適な生活を寒い寒いなどと騒ぎたてることなく暮らし、少ないエネルギー消費で暮らせるように、住まいという器、もしくは躯体をしっかりと設計し、確実な施工を求めて初めて健康住宅を生活者のために保障していけるのです。
 建物の体温は床下空間で16℃以上に保たれ、建物全体が床下から屋根裏までほぼ一定に近づくよう温度差を小さくし、21℃から23℃に保てる家づくりを選択できるようになっています。要は我々のからだと同じように、体温維持をしてあげることです。そのために、しっかりした健康住宅の器としての躯体を設計施工し、健康住宅を保障していくのが前提でしょう。

2015年12月21日

レポート1 快適な浴室と入浴で健康長寿

快適な浴室と入浴で健康長寿

11月26日に体感見学した、奈良の健康住宅の浴室は2階にあり、窓がありません。
本来水回りは1階に配置し、外部に面して窓が開かれている設計が一般的です。
ところで、入浴時の高齢者死亡事故が家庭内事故として多くみられ、我が国特有との報告があります。このため、室温に温度差のない、室温バリアフリーのため、脱衣場や浴室を暖房するようにとの指導が一般的です。
このような事故防止を踏まえ、この奈良の住いは、浴室においても健やかに住みこなすため、住い全体の室温を考慮した浴室の在り方が提案されています。

(1)住い全体の室温バリアフリー
 居住スペースの温度は、冬季でも21℃から23℃で保たれており、トイレや脱衣場、浴室も21℃ぐらいに保たれています。また24時間常時換気も維持されていますので、寝室でも居間でも、室内であれば温度の変化を感じない室温バリアフリーが実現しています。
従来の住まいや家づくりでは、室温が10℃以下になる場合、外出先からの帰宅時に急いで暖房器具などを点火使用し、その部屋だけ暖かめるという住まい方が一般的です。そんな住まいでは、図1に示す水回りのような暖房されていない居住スペースでのストレスや、暮らしにくさが見受けられます。暖房室と非暖房室の温度差が大きく、ヒートショックを起こしやすい生活です。

(2)ユニットバスという浴室
東京オリンピックの選手村に据えるために開発されたユニット型バスルームは、その後のビジネスホテルの普及でさらに進化しました。今では自宅や集合住宅の新築時には、必ずバスルームを設置。しかもユニットバスという、浴室一体成型の既製品が普及しています。しかし、その使い方を間違えると、健康で快適、かつ効果的な入浴をすることができないし、ヒートショックなどの家庭内事故を引き起こします。
昨今では、浴室に常時稼働機能を持つ局所換気扇が設置されており、換気のための窓の設置が無くてもよいことになってきました。防犯上やプライバシーの面からも、近隣からの過干渉を避けるため設置を見合わせ、ストレスフルな暮らしを満喫しようというものです
採光のためなら、新しい照明器具が開発され、さらに音響や映像的な楽しみ方の装置も開発されています。湯が冷めない、温かい洗い場を提供するなど、浴槽や洗い場の裏に断熱材を密着させた高機能なユニットバスも製造されています。

(3)浴室のカビ対策・臭い対策
浴室でクロカビの生えた天井・壁面の中で暮らしている方たちがどんなに多いか。ピンク色のカビとクロカビの生えたヌルリとした洗い場、浴室床ではカビ臭さも日常となっているようですが、日々の最後の使用者が清掃するかだけでなく、普段の入浴の仕方にカビ発生の原因があるのです。
湯蓋の使い方と換気装置の使い方でカビ発生は予防できます。
奈良市中の健康住宅では、湯を溜める段階から蓋をきちんとしています。蓋をして42℃の給湯で溜める時は浴室温度が25℃ぐらいになります。浴室に入室するとき、浴室換気扇を連続的に動かします。浴室にガラリやドア隙間から脱衣場の21℃の空気が侵入しても、連続的に入浴中も運転し続けます。
入浴後は速やかに浴槽に蓋をし、無駄な湯気を出さないようにし、洗い場を懸け湯で流し、水気をタオルなどでふき取って浴室を出ます。このとき注意することは、換気扇を止めてはいけないということです。
最後の人も湯蓋をきちんとし、換気扇を連続運転にセットするのです。20℃以上もある壁面や天井の結露はかなり少なく、壁面や天井の結露は多少あってもそうそう心配いりません。
翌朝浴室の床面が乾き始めていたら、浴室の局所換気扇は止めて浴室ドアを開きます。この後は脱衣場の排気で浴室の水蒸気も排湿され、速やかに乾燥し、カビの繁殖が抑えられます。浴室の手ぬぐいやタオルも乾燥します。この床面の乾燥度合いが、住宅水回りの乾燥度合いに関係しています。

(4)換気扇を止めずに健康的で効果的な入浴法
室温21℃で快適だという住まいでの生活者は、冬季でも寒い寒いなどと騒がないです。また脱衣場などを暖房しなくても裸になれます。
浴室温は23℃ぐらいでありましょうから、換気扇を止めずに入浴できます。湯温36℃台では寒いと感じるのが健全な知覚の方です。この温度では、半身浴は厳しく差し湯か追焚きで加温が必要です。39℃台以下だと副交感神経優位に働きますが、40℃台では交感神経優位になり、長湯には不向きです。
42℃と高めの場合には短い15分間で湯から上がり繰り返しの入浴法を心がける必要があります。心拍も激しく、血流も増加し、新陳代謝も高まり、呼吸数も高まります。浴室内の換気も高め、二酸化炭素などの老廃物を速やかに浴室から排出させ、新鮮な空気を十分に浴室に取り込みたいものです。高まった吸気には新鮮な目いっぱいの酸素が体の中に取り込まれます。
1日中汚れた外気や工場施設の中で吸い込んだ汚れを、身体から洗い流すだけでなく、気道や口腔内からも排出しながら潤し、体内からもからだを蝕む老廃物を排泄・排出させ、リラックスして質の良い睡眠を摂れるような入浴法をこれからは実践させて欲しいものです。

2014年04月26日

ブログ10 これからの床下空間

見過ごされがちな「床下空間」が家の命

最近は寒冷地ばかりでなく、南の鹿児島でも高性能な住宅(温度差の少ない快適な家)が求められています。そこで、これからの家づくりに大切な基本中の基本、健康住宅に欠かせない床下空間の大切さについて、具体的な事例で触れてみたいと思います。

写真1.K邸の床下点検口と点検用スケボー

1. 床下空間のつくり方こそが健康住宅の決め手

 ◆2世帯家族同居の家づくり
 昨2013年の春、これからの生活を息子家族と健康的に過ごしたいと願う70代ご夫妻から、当協会会員工務店が、家づくりの相談を受けました。「夏も涼しく生活できる家に住み替えをしたいのですが、どんな点に注意して決めればいいのでしょうか。」 「いい家のつくり方で最も大切な押さえどころを教えてください」。
その約1年後の2014年3月30日、ご夫妻(K邸)の家づくりが完成し、無事お引き渡しとなりました。当日の天候は、咲き初めの桜も震えるかと思える肌寒い雨降り。その翌日からの数日は、打って変わった快晴の引っ越し日和に、少しほっといたしました。

 ◆ 引き渡しに向けた科学的検査を実施
 前々日から竣工検査に併せて、当協会と第三者検査機関協力で行う、引き渡しに向けた屋内の空気質検査と生物学的検査(カビ・ダニなど)を実施致しました。70代ご夫妻の終の棲家であり、息子さんの家族との同居になるわけですから、せっかくの新居がシックハウスであっては困ります。あらかじめ快適で健康な居住空間である状態をきちんと確認し、安心してご入居していただきたいからです。

2.見えない床下空間の環境と施工管理を確認

◆ 床下空気質の安全を確認
 この新居の床下には、点検用のスケボーが置いてあります(写真1)。床下の2か所の点検口を開き、きれいに清掃されているコンクリートの床下を確認。施工状態と管理状況もチェックしました。
床下であっても、深呼吸できるほど清潔な空気環境を確認出来ました。床下の温度は14.0℃、相対湿度は80%、露点は8.8℃。この状況の床下では、床下温度9℃以下に下がらなければ結露はしません。でも、そんな心配は、この建物ではありえません。

◆ 結露しない床下 

 先ず、年間を通じて、床下地中からの水蒸気の侵入はありません。それに真冬でも、地中熱で14℃以下の温度にならない地中から直接水道管を床下に導入しているので、表面結露も起こりません。なので、湿度が上昇し、結露が発生し結露水で濡れてカビが繁殖するなどという心配はありません。万が一、漏水や出水事故が起こるようなことでもなければ、水で濡れることもないのです。わずかな漏水も点検口を開けば容易に判明します。


3.住む人の健康を支える「基礎外断熱スラブ工法」

◆ 住めば住むほど床下温度が安定
 このような床下状況を可能にしているポイントは、このK邸が「基礎外断熱スラブ工法」で施工されているからです。基礎外断熱スラブ工法での床下環境は、立地条件にもよりますが、冬季には12℃以上18℃ぐらいで推移します。
 春になり、朝夕まだまだ肌寒い気温が断続的に続く5月の連休ごろまで、この新居K邸の床下空間は、18℃の温度、相対湿度50%で推移していきます。因みにこの時期、沖縄エリアを除く日本の各地の外気温は、10℃以下の冷蔵庫の中の温度と同じか、それ以下です。つまり、外気温は肌寒いのです。

◆ 床が裸足でも冷たくない
 冬季間の床下温度は、18℃まで上昇します。床面は素足でも温かさを感じられるほど、居住空間からの暖房の影響で仕込まれていきます。これが冬季におけるこの基礎外断熱スラブ工法の床下温熱環境(写真2)です。
 ハイハイ歩きの赤ちゃんから高齢者まで、生活する人すべてに快適な温熱環境をプレゼントしてくれる建物になります。室温はそれほど高くないのにもかかわらず、子供たちは靴下を脱ぎ棄て、裸足になるくらいの床温が保てます。



写真2.16℃表示の床下土間表面温度【竣工初年度 】


4.住む人の健康を育む、冬季の暖かい床温度

◆ 冬季から初夏までの暖房温度
 「基礎外断熱スラブ工法」の建物の室温は、冬季から初夏に至る時期、室内の暖房が無ければ、床下空間温度より低下してしまいます。そこで、これらの建物は、暖房設備の設定を19.0℃に維持します。もちろん、この温度は住まう人のお好みで温度設定します。おおむね、床下空間温度より高く、18℃から24℃ぐらいまでの間で設定しているケースが多いです。

◆ 初夏までの床下空間の温度
 基礎外断熱スラブ工法の床下空間は、春分を過ぎて桜前線の北上に伴う外気温の上昇には追随致しません。 穀雨の頃の高性能健康住宅では、どんな温熱環境になるのかを図1に示したデータでご確認ください。いかがでしょう。ご自宅の床下空間と比較してみてください。
冬季間はもちろんですが、住む地域によって梅雨明けの頃まで、床下空間は18℃前後の温度で推移します。入梅の頃からようやく床下温度上昇が始まり、いよいよ夏季の床下空間に移行し始めます。

図1.穀雨の頃の高性能健康住宅の温熱環境データ


5.夏季の「カラットした床下」に健康住宅の真価を発揮
◆ 遮熱という新しい夏の家づくり
 立夏の頃を過ぎると衣替えの季節です。そして入梅。我が国独特な夏の季節が始まります。
日本の気候は湿度が高く高温になり、高温多湿という気候を迎えます。従来の家つくりでは、陽射しを遮り、風通しを良くしておりました。
 最近は、不必要な日射を窓から入れず、かつ高性能な住宅で、熱中症にならないために、省エネでありながら高機能な冷房設備を効果的に使用する傾向が一般的になりつつあります。K邸もそうした「遮熱」といった住まい方が可能です。
 床下空間のつくり方、活かし方で、夏季の住まい方が変わります。 8月、9月の外気温の高い時期ではありながら、K邸の床下空間は24℃から26℃ぐらいで推移するでしょう。

◆ 冬季に向けて温かい床面の形成される
 ススキの穂が見事に育つころ、ようやく床下空間の温度は下がり始めます。朝晩の寒暖差が激しくなり、急激に冬の到来を感じさせますが、住めば住むほど床下空間の温熱環境は、さらに改善され、安定していきます。図2に、住み込んで12年目の高性能健康住宅の晩秋の温熱環境データを示しましたので、参考にしてください。

図2.高性能健康住宅の晩秋データ【居住12年目】

 秋雨の寒い日、午前7時の外気温と湿度が、それぞれ5.2℃、85%です。この建物の床下空間と居住環境を比較してみてください。床下環境は20.1℃、湿度51%となりますが、外気温と15℃以上もの温度差が出来てしまいました。さらに1F、2Fの室温は約20℃という外気温にまったく左右されない居住スペースの快適環境が、確認できます。


6.いつでも見たい! 床下空間の安全確認

◆ ヒトの生活する室内で必要なこと
 この建物の室内では、常時換気で住む人に大切な酸素濃度が保証されています。室内の空気を汚す場所、キッチンや浴室での局所換気設備の設置は当然です。さらにシステム換気は、空気質汚染の指標である二酸化炭素濃度750ppm以下を維持できる、室内空気質を保ちます。 
 生活する人が無意識に新鮮空気を呼吸出来れば、摂取した食物が私たちのからだの隅々の細胞や組織で健全な代謝が営まれます。こうした必要な酸素が供給され、代謝産物のCO2が速やかに屋内から排泄される空気環境があってこそ、人体の身体機能は発揮でき、健全に維持されます。
 換気システムは、単なるシックハウス対策ではありません。ここのところを十分ご理解いただきたいところです。

◆ ヒトの住まない床下空間に必要なこと
 人が生活しない床下空間とはいえ、換気、通気、通風の摂れていることが必 要です。床下空間を密閉してしまいますと、床下に結露が発生し、金属部は錆をつくり耐久性を落とします。基礎外断熱スラブ工法を採用していない床下の点検口を開けて、カビ臭さが漂っていたら、慎重に点検しなければなりません。また、酸欠状態の床下空間にいきなり入ることは、ヒトの生命にとって大変危険です。

◆容易な床下点検が、家の健康寿命を延ばす
 見えない床下空間は、安心してライフラインのメンテナンスと手入れのし易い状態にして置きたいものです。見過ごされがちな床下空間は、安全な定期点検を実施し、住まいを健やかな状態に維持しておかなければなりません。基礎外断熱スラブ工法のK邸は、こうした点検を長期にわたり容易にすることができるのです。ご家族の健やかで快適な暮らしを、長期間に渡り支えてくれましょう。

◆健康な床下空間が、住む人の健康を支える
 K様の望まれた「夏を涼しく過ごしたい」という家の床下空間は、年中14℃以上~28℃に保たれ、高さの採れない空間(図1)ながら(約40㎝高)、スノボーを使えば(キャスター付きボードに背中または腹部を乗せて移動する)、一目瞭然です。
 懐中電灯片手に暗黒の床下空間を自由に動き回り、点検確認し、簡単な修理なら自らできます。酸欠状態になることやカビが発生してカビ臭が漂うことも無く、シロアリ被害の起きる心配や不安もなく暮らせ、住む人が自ら安心して点検や確認ができるのです。
この点が、健康な床下空間のつくり方の押さえどころであり、住まう人と建物両者の健康を支える基本として、とても大切な点です。
(2014.4.24)

2014年01月15日

ブログ9  これからの家選び ―欠かせない新鮮空気―

健康な赤ちゃんの命を育む家選び
授かった赤ちゃんとともに、これから幸せな家庭を築こうとする若い夫婦から、住宅選びの相談を受けました。「いい家の選び方がよく解りません。あまりに知識が少なく、営業マンやコマーシャルペースに乗っているようで不安です。何を基本として判断し、選ぶべきかを教えてください」というものです。最近はどなたも、省エネで寒暑の温度差が少ない快適な家を求めようとしているのですが、はたしてこれだけでよいのでしょうか?これからの家づくりにも参考となる、家選び家づくりに大切な基本中の基本に、触れてみたいと思います。
 
  

 <写真1.新鮮空気が欠かせない乳幼児の成長。換気システムの完備は、
               建材の化学物質汚染すら緩和してくれます>

◆あなどれない見えない空気
 案外見過ごされがちですが、閉じられた室内にひとが居ると、室内酸素濃度は徐々に低下します。ひとが消費しているのです。逆に二酸化炭素は徐々に増加します。新鮮空気の体積比率構成は、78.1%の窒素(N2)、20.1%の酸素(O2)、0.0398%の二酸化炭素(CO2)濃度です。
 酸素の濃度が15%以下に低下すると、ひとは疲労を覚えたり、作業能率低下を起こしたり、頭痛を感じるようになります。二酸化炭素の濃度が、わずか3~4%を超えると頭痛・めまい・吐き気などを催し、7%を超えると数分で意識を失い、この状態の継続で、死に至ると報告されています。室内の空気汚染は、二酸化炭素の濃度を基準に決めております。室内の二酸化炭素濃度は750ppm以下に保ちたいものです。
 ところで、先の若い夫婦の赤ちゃんは、いまお母さんのお腹の中で健やかに育っています。母体が、十分な酸素濃度の含まれていない寝室や居間で生活すると、その呼吸で得られる血中酸素濃度が胎児の血中酸素濃度に影響し、成長著しい組織の代謝に影響します。十分な酸素濃度が得られる寝室や居間、あるいは職場環境での生活が、妊婦さんにはとくに大切です。なぜなら、聴覚や脳神経系など各器官は、とくに妊娠初期に形成されて、3カ月(14週)頃から、本人も周囲もまだ胎児の存在をよく意識しない時期に、発育しているのです。

◆ひとの健康の源は呼吸で決まる
 一方、誕生した新生児は、一日20時間以上も寝ています。そうして自力呼吸にて外呼吸に適応していくのです。寝室での新鮮空気の管理は、成人に発育するまで住まいの中でしなければなりません。受験勉強に明け暮れる学生時代、仕事で明け暮れする青年にとっても、疲れを癒すには十分な睡眠や休養ばかりでなく、新鮮な空気の供給により、全身組織での代謝とエネルギーの再生産が欠かせません。
 家族の健康は、この屋内での新鮮空気の確保がまずなされていなければなりません。高齢の域に達し、アンチエイジングを試みるにも、認知症の発症を遅らせ健康寿命を長く保つよう筋力を維持するにも、室内や寝室の換気の有無がカギを握ります。これからの住まいをつくるうえで、忘れてはならない大きなポイントです。
 屋外での体力づくりや身体活動、労働では問題ありませんし、屋内で窓を常に開放した暮らしでは問題はありません。しかし、夏でも冷房や防犯などのために窓を閉め切って暮らしたり、冬の寒さ対策で窓を閉め切り暖房するには、かならず人為的な換気が必要条件です。
 何れにしても、積極的に酸素濃度21%の新鮮空気が供給される室内や住まいを持たなければ、明日への活力ある身体はつくれません。

◆胎児に欠かせない血中酸素
 もう一度赤ちゃんの成長に話を戻します。赤ちゃんは、お腹の中で約10ヶ月、お母さんの栄養で育ちます。臍帯を通じてお母さんの血管からの栄養が、胎児の血管を通して供給されています。お母さんの摂取した食物の栄養が血液に入って胎盤まで届き、胎児側の血流に移行するのです。栄養は、胎児の独立した血流で全身組織に運ばれ、代謝されます。
 実はこの代謝に関わる大切なものに、酸素があります。胎児の体内酸素は、お母さんの血流から栄養と同じように運ばれます。酸素の運搬役は、赤血球のヘモグロビンです。母親の呼吸で肺胞から取り入れられた血中酸素が、胎盤を介して胎児血流(胎児ヘモグロビン)により、胎児の全身組織に運ばれているのです。胎児は血中酸素と栄養を使って、発育に大切なエネルギー(ATP)をつくり、急成長に欠かせない代謝を、活発に行います。
 胎児の代謝産物である二酸化炭素(CO2)などは、胎児自身では排泄できません。胎児血流から再び臍帯を通り、胎盤で母体の血流に移動し、母体の肺呼吸や腎臓を使って排泄されています。呼吸と排尿以外の特に心拍などは、胎児のときから動いて自身の血流を保っています。

◆ひとは呼吸する生き物という意識
 赤ちゃんが、無事に普通分娩で体内から生み出されるとき、呼吸は自力で開始されます。先ず、吸う息です。さらに吐く息で、オギャーという鳴き声が発せられるのです。この瞬間、ヒトは自力呼吸で自分の代謝に必要な酸素を肺から体内に取り入れ、血中のヘモグロビンと結合し、全身の組織に運ばれます。ここで外呼吸が開始されます。 綺麗な室内空気が、広がった肺胞を満たすのです。もし、汚れた空気、たとえばタバコの汚れた空気で満たされたら、無垢な赤ちゃんは肺から汚れてしまいます。
 新生児期に、小さな肺は40回(/分)も動き、幼児・少年期の段階で異なりますが、からだが大人になれば、1分間に15回、1回当たり500ccの呼吸量を無意識に維持し、呼吸が停止する最後のときまで、一生規則的に動き続けます。当たり前のことですが、ひとが呼吸しなければ生きられないというこの事実をきちんと認識すれば、住まい選びはほぼ順調に進むのです。
 無事に成長した大人では、呼吸により温度37℃相対湿度100%の息が吐き出されます。新鮮空気の構成は、21%の酸素濃度、0.03%の二酸化炭素濃度と先に述べました。ひとは、これを呼吸で体内に吸い込んでいます。安静時では、酸素濃度16%、二酸化炭素濃度4.1%で吐き出しています。つまり、安静時や睡眠時には、約5%の酸素が体内に取り込まれ、体内から約4%の二酸化炭素が排泄されているのです。

◆あなたの寝室や居間は、新鮮空気で満たされていますか?
 私たちが熟睡しているとき、窓を開けての換気は健康上や防犯上、不可能です。そこで、ひとの命を健康に育み、病気を予防する生活をするには、とくに寝室や居間に換気が出来ていることが重要なのです。住まいの空気を汚す場所での適切な換気装置の設置は当然ですし、空気汚染建材などを使用しないことはもちろんのことです。

 何度も繰り返しますが、これからの健康的な住まいづくりには、屋内や室内の空気質の管理に配慮することが必要です。その時に計画換気システムを採用しているか。システムでなければ、どんな換気方法を採用しているかを確認することです。機械設備ですので、定期的なメンテナンスも大切です。フィルターのチェックや交換は、定期的に必要です。この換気システムを、暮らしにどう生かして効果の出る使い方をするかが、生命の誕生、健康と長寿を維持する上で、今後ますます重視されることでしょう。
あなたの寝室ではどのくらいの新鮮空気を導入しているのか、1度計測し、確認してみてください。

  

<写真2.室内空気質の測定器で室温・相対湿度・二酸化炭素濃度の測定・見える化>

 ちなみに関西在住の会員工務店ご夫婦が、幼稚園児と3人で寝る寝室の二酸化酸素を測定(写真2によるデータで確認)。寝る直前の値は520ppmだったところ、朝起きたときには10倍の5200ppmになっていることを確認。驚いてすぐに、自宅寝室の換気システム導入に踏み切りました。空気の見える化で解った二酸化炭素濃度による、換気システム導入例です。

◆看護のパイオニア・ナイチンゲールの発見
 それまで無防備に構えていた新鮮空気への考慮。目に見えない空気の存在をあなどると、自身の疲れの回復が遅れたり、頭がスッキリせずそばにいるひとにいらいらしたり、子どもなら朝から頭がぼんやりして、スイッチが入っていないなんてこともあることに。病身の回復に必要不可欠なのが新鮮空気であることを、いち早く気づいたのが看護のパイオニア・ナイチンゲールです。今までの住まいづくりの多くは、あなたの健康や命と生活に欠かせない換気(新鮮空気の供給と排泄)が、十分でないことが多いのです。

 お腹の中に赤ちゃんを身ごもってから、最後のお別れのときまでお世話になる空気。この空気に配慮された住宅を選択することが、欠かせないポイントであることを、冒頭の若いご夫婦に説いて聞かせたのはいうまでもありません。
(2014.小寒)


2013年12月26日

ブログ8 古いビルに学ぶ暖房手法と考え方

健康的でない温度差の大きい暖房
12月中旬に今冬一番の冷え込みを迎えている東京。新宿の古いオフィスビルに通う旧友から、室温の温度環境に対する相談を受けました。古いビルの温度環境を例に、温度差の少ない快適な家の実現と、これからの家づくりに参考となる屋内温度環境の在り方に触れてみましょう。

  

図1.東京における外気温の推移
 (縦軸に温度を表示、横軸に12月13日から17日の時間経緯を示す。最高気温が
   15℃以下の日が続き、日中16時過ぎに外気温が低下し始め、夜間は10℃以下に
     冷え込んでいく。冬至に向けて、初雪の天気予報が出ている。2013.12.17)

◆よく受ける質問とは
20余年前に新しい省エネ住宅を提案し普及させていたころから、よくこんな質問を頂きました。今でも同じ質問を受けます。質問者は、新しい住宅づくりに意欲を燃やし、モデルハウスを建てた工務店経営者です。
「事務所のとなりに、高気密高断熱のモデル住宅を建設しました。冬場にモデル棟に入ると本当に温かく、床面での温度と天井近い位置での上下の温度差が、ほとんどないことが体感できました。また、早朝に出社しても屋内が温かく、室内の温度差が自宅とあまりに違い、驚きました。以前のつくり方の住まいとは、だいぶ快適さに違いがでることは判りました。このような快適な住宅を提案して行く会社の方針が、よく体感できました」と。
問題はここからです。「ところで、事務所でも同じ暖房器としてエアコンを使用しています。同じように暖房しているのに、机の下や足元が寒く、ちっとも温かくなりません。断熱方法や気密性能がいいと、温度差がなくなり、足元でも温かくなるのですか。どうしてこんなにも足元の快適さに違いがあるのでしょうか?」という質問です。
今でも、全国どこへ行っても受けることの多い質問です。いまの時代、最先端の情報にあふれ、省エネビルの建て替えの需要の多い東京でさえ、こんな質問はまだまだ普通です。私としては、この質問がある限り、住まいの断熱も省エネも根本的に理解されていない、根付いていないと視ています。

◆必要な時にのみ暖房する習慣の寒い部屋
実際のエアコン暖房を見てみましょう。図1に東京における最新の外気温変動を示しました。外気温の影響をもろに受けている、古い中低層のオフィスビルの暖房事情を、記録に留めてみました。図2は、オフィスビル6階約7畳の事務所で、床面10㎝と床上200㎝2箇所に置いた温度計の、4日間の室温記録です。
暖房はエアコン1台が、北面の窓側上部、ほぼ天井に近い位置に設置されており、夏の冷房と冬の暖房を在室時のみ稼働しています。早朝の室温は、外気温の変化(図1)にともない徐々に低下し、16日早朝の室内温度計は、2台ともに14℃を記録しています。10時以降は太陽の上昇とともに、外気温上昇の影響で室温はわずかに上昇し始め、エアコン暖房を点けると急激な上昇をはじめているのが認められます。
通常、10℃以下の屋外から建物に入るとほんのりと温かさを感じ、さらに15℃以下なら、室内に入ってもコートを脱げるくらいの温かさです。エアコンを27℃設定にして連続的に稼働し続けると、一気に24℃まで駆け上がります。しかし、床面ではなかなか上昇せず、16℃ぐらいを示し、上下の温度差は8℃以上になります。
天井に近いエアコンぐらいの高さに置かれた温度計は、2時間ぐらいで設定した27℃まで一気に上昇推移します。しかし、床面近くにセットした温度計は、5時間を掛けて、ようやく17℃ぐらいの上昇に留まります。床に近い壁面や机の下の温度も、17、8℃という温度で天井より10℃ぐらい低い温度以上には上昇しません。
   
  

図2.ビル6階における西向きのオフィスの室温の推移
 (図1の外気温の東京での鉄筋コンクリートのオフィスビルでの従来型
           暖房時の床面温度と2mの高さでの室温の2色記録)
  
 図2に示した室温の暖房記録には、暖房空間の温熱性能が上下の温度差として現れています。暖房を停止すると、天井近くの室温は一気に温度低下し、約6時間後には床温度より低くまで落ちてしまいます。この事務所空間の窓は、単板ガラス入りのアルミ枠製ですから熱伝導が良く、室温から外気への逃げる熱量が大きく、暖房熱もどんどん外気に伝わり逃げます。
 コンクリート製の壁面や床面にも暖房熱が伝わり(奪われて)、徐々に壁面や床面が温まります。暖房停止時には、窓面に比べて、コンクリートの床・壁面は熱の逃げ方(冷め方)が遅いので、一旦上昇した室温が床面などで高いという逆転現象が認められます。外気温の低下の影響は、室内では温もりのある壁面や床面より、天井のような高く離れた室内で記録されます。図2の記録では、天井面の温度記録が室温の最低を示しているような状況です。

◆連続稼働だけでも快適な居室にはならない

  

(図3:床上100cmの机上の温度&湿度)
<無断熱の鉄筋コンクリート室内で、エアコン暖房は空気が乾燥し寒々しい>
 図3には、床上100㎝の高さでコンクリート壁面の近く、窓から遠く離れた位置に設置記録したデータを示しました。早朝、室内は吐く息が白くならなくても壁面に素手を触れるとゾッとする冷たさを感じます。この室内の温度環境にエアコン27℃設定暖房しても、22℃から24℃ぐらいまでしか上昇しません。いくらエアコンを高温に設定しても、腰の高さから下、床に近い空間は、18℃以下。せいぜい15℃ぐらいまでの温度環境にしかなりません。天井との温度差は、10℃以上です。

◆下半身が温まらない、不健康空間での生活や活動
このような寒い温度環境に下半身を置き、午前中の仕事を終える昼休みの頃には、ほとんどの人が身体の腰部から膝下脚部に、「だるさ」「ふくらみ」「冷たさ」などを感じるものです。その原因は、頭寒足熱ならぬ頭熱足冷により、腰から下の下半身の血流を流れ難くしてしまっているからです。
 足の裏などの床面に近い部位は、靴に守られ保温されていますが、踝(くるぶし)近辺には体温生産の出来る筋肉が極めて少ない部分です。この部位の高さは、室温の低下がもろに影響している場所なのです。これが今までの古い建築、集合住宅やオフィスビルでのエアコン暖房方法による温度環境の実態で、限界です。
夏季ですと冷房病としてのストレスが問題となりますが、冬の暖房時には、冷気ゾーンが床上80cmまでの高さに形成されているのです。その原因の一つ目は、暖房器の間欠運転にあります。不在の時に、「もったいない」と暖房を切っていったん室温を下げてしまうと、また暖房をし始めても、温まるのは天井付近の部屋の高い空間だけです。また、エアコンについている設定温度センサーの位置も高すぎるのです。逆にたとえ温度センサーを部屋の低い位置に変更したとしても、その位置から上の空間が27℃という高温になってしまうのです。

◆侮れないコールドドラフト現象
室温で上下温度差の生じる原因は、一般には天井面などに隙間のある木造家屋のことですが、今回は気密性の高い鉄筋コンクリート造りのオフィスや集合住宅のことですから、これには触れず別の機会にお話します。ここで問題にしたいのは、上方からの暖気が床面に到達しえない空気の性質です。目には見えないのですが、冷たい空気は床面側にあり、暖気の空気は浮力があるので、天井側の上方に留まり、なかなか下方まで温めることはできません。このような無断熱の室内環境や暖房方法では、上下の温度差が少ない室内をつくることは不可能です。
 とくに、開口部の断熱性能が悪いため、開口部近くの室内側の空気は熱を奪われて、下方に落ちて(流れて)いきます。これがコールドドラフト現象といい、冷たい下降流を常に起こします。この冷たい流れ(気流)は床面に近い部分で床面を這い回ります。すると床の冷えと体感温度の低下を引き起こしてしまうのです。
そのため、実際の温度より冷たい体感温度になってしまい、不快感を起こします。いわゆる、自律神経失調症を起こしてしまいます。

◆健康な身体を維持する温かい暮らし
対策は、省エネ構造のリフォームを先ず選択すべきですが、暖房方法だけで済ますのでしたら、対流型の暖房器の他に輻射型の暖房器の併用です。そして常に一定の室内温度、17℃~20℃での連続運転を目指します。多少省エネにならずとも、暖房を連続運転し、時間をかけて床面や壁面温度を上げ続けることです。18℃以上の輻射熱暖房の連続運転でもいいのです。連続運転時には、高温設定には致しません。一般には、この程度の室温設定で十分です。断熱リフォームなどの初期投資をかけず、とにかく現状の不快感は削減できます。

ご自分のからだの状態や現状に合わせて、気に入った暖房方式を選択すればよいではありませんか。

最後に、湿度管理や空気質の管理を配慮することが、今後の健康的な住まいづくりには必要です。室内設定温度は18℃で寒いのであれば、住む人の体感温度で決めればいいのです。この温度では、通常素足(裸足)やショートパンツでの生活では長時間は耐えられません。低温な室温設定でも寒くない足先や身体の着衣量を、自身の体感で適切に選び、暮らし方を選ぶことが、病気(持病)と健康を考えての住まい方には役立つことでしょう。冬は体の表熱を奪われないようにできるだけ空気を動かさず、反対に夏は空気を動かすことが、快適空間をつくるコツです。
(2013.12.18)


2013年12月16日

ブログ7 音楽演奏を楽しむ住まいづくり

 サントリーホールで「音楽温度」を確かめる
音楽を楽しむには、演奏家にも聴く方にも、会場や室内で「寒さ」を我慢するのは禁物です。「寒さ」は演奏家の指の動きを意のままにさせず、思うような演奏ができません。関節の炎症を起こしてもおかしくないくらいの負担で、苦痛になります。つい最近、機会を得てサントリーホールに出かけたときの体験を通して、音楽を快適に楽しむ住まい方・暮らし方にも参考になる、快適な室内温度の環境づくりについて再発見、再確認したいくつかのヒントをお伝えします。

  
 (写真1.小雪の日、アーク・カラヤン広場の屋台アークヒルズ広場2013112218:45)
    <開演15分前の賑わい。外気温11℃と寒い>

◆開演前の大ホール・ホワイエにて
日本を代表するサントリーホールですが、鑑賞するための空調設備が管理されています。このホールでの温度、湿度の体感を通して、当ホールの環境づくりをご紹介しましょう。エントランスホールの床は大理石。ホワイエに入ると、すでにこの日の演目を期待して、たくさんの来場者があふれ、開演前の華やかな雰囲気が。早速、クロークにて会場の体感温度を探るために、コートを預けることにしました。案の定、防寒コートを脱ぐと、ホワイエは吹き抜け空間で風通しが良いため、いままでの体温の温かみが一気に飛んでしまいました。
  
 
(写真2:定期演奏会の座席券とパンフレット)

私のシート番号1階8列16番は、舞台の最後部ステージレベルの高さ。舞台一面が見渡せる位置の一階席です。写真3の左下隅の位置にあたり、指揮者とピアニスト、デジュ・ラーンキさんの演奏する両手指先の動きや、ピアノ鍵盤全面を確認できる座席のひとつです。
  
(写真3:座席の正面はコンサートマスターの椅子の後ろになります。ピアノコンチェルトではピアニストの鍵盤上の指の動きをすべての確認できる高さの位置)

この1階席前部座席は、初めてでした。想定していた位置より高く、アーティストの胸の高さに目線が一致していました。座席を倒そうとすると、座面は温かくいい感触でした。座っても冷たくなく、オーク材の積層30mmの立派なフレームでつくられ、座席背板にもブドウ色の布張りが立派でした。木部は冷たさを感じなく、「これが23℃の感触だ」とひとり納得。通常、サントリーホール・大ホールが管理している温熱環境は、23.5℃、湿度55%だそうです。


(写真4:オーク材の木部フレームにウレタン塗装。布張りの座席)


◆ホール内の苛酷な環境を守る空調設備
既に7割ぐらいの着席率で、団員の入場とピアノでのチューイングを始めるころにはほとんど満席。聴衆は2000人弱の着席具合です。足元の大理石からの冷気も気にならず、靴の中も温かく、快適。見上げると天井のシャンデリアには音響反射板が取り付けられており、光源からの照明がステージに注がれています。目視での判断ですが、高齢の方が多く、女性も半数ぐらいを占めているので、聴衆の平均体重は45Kgでしょうか。
開演すれば、約45 Kg、体温37℃の聴衆と団員合わせて約2080人の発熱による発汗、呼気からの二酸化炭素の排泄による水分が、ホール内に大量にあふれます。そのため、新鮮空気を送り込む空調設備がステージ周辺に2台、観客席側に1台でフル稼働しているとのこと。

◆空調設備は温湿度、二酸化炭素排出にフル稼働
空調設備は、開演前には室温23℃より低下させ、開演時に大ホールの外部とのドアを閉める段階で24℃ぐらいにいったん上がり、演奏中は23.5℃ぐらいでコントロールされていると考えられます。湿度も、50%より一気に上昇し始めるのを下げるのにフル稼働させ、換気も人の呼吸で増加する二酸化炭素濃度は、750ppmぐらいに下げる働きをしています。
いよいよピアニスト、デジュ・ラーンキさんの入場。第一部はブラームスのピアノ協奏曲第2番。大柄で、椅子に就いたらフルコングランドピアノが小さく見えるほどでした。ピアノの蓋が目いっぱい大きく開かれているため、残念ながら指揮者台が見えません。続く指揮者の上岡俊之さんが入場し、指揮台へ。すでに、ステージを囲むヴィンヤード形式の2階席まで聴衆はほぼ満席です。この時点で、大ホール用の空調は、ホール内の人の容量を把握し、後は演奏者の運動量による変動に対応するはずです。


◆演奏者に配慮した温度環境
デジュ・ラーンキさんと団員の譜面台に注がれる視線で息詰まる中、ホルンの演奏から始まりました。弦楽器やピアノの演奏家が、指先までを繊細にビブラート(左手の指先を早くゆらせて、音色を豊かにふくよかにするテクニック)を懸けて、素晴らしい演奏を続けます。演奏が難なくこなせていることから、このホール内が、平均23.5℃に管理されている温度環境であることを確認出来ます。指揮者は全身運動で、体表からの発汗があり、タクトを振っての表現でも、とくに指先の冷たさは感じないでしょう。

◆人が集まれば水分コントロールが必要
休憩の間に、ステージの真ん前にあったピアノは蓋を下して、舞台裏に移動しました。指揮者台はセンターに移動し、第1ヴァイオリンとビオラパートの席はセンターに寄り、第二部開演の準備が始まりました。
隣人の体温の輻射熱をどう感じるか探ろうとしましたが、隣人の温かみを確認できません。着衣の布地の表面に軽く手を触れても、温度差や輻射熱は確認できませんでした。座席の木部も同じかなと想像しながら触ると、やや冷んやりしています。これは木部の塗装面による皮膚からの熱の逃げが大きいから、ややひんやり感じるのです。このホール内が23.5℃でも、会場の内装材と使用されている大理石に素手で触れると、はっきり冷たいと感じます。
この日、東京の昼間には乾燥情報が発信されていたくらいでしたから、外気は乾燥空気でした。このような日であっても、湿度は平均55%を保つため、大変な除湿をしています。ホール内は呼気と発汗による大量の水分量をコントロールしなければならないので空調機はフル稼働しています。もちろん、保管庫に移動したピアノも23.5℃、55%に維持されているそうです。

◆ピアノなどの楽器を結露させない秘訣 
ピアノの弦は金属でできており、結露があると、長い間には錆が発生致します。ピアノ部屋や保管庫の温度を一旦下げてしまうと、再度室温を上げる際に、ピアノ内部は温度上昇が遅れてしまい(なかなか室温に達せず)、結露しやすいのです。この結露発生が繰り返されると、ピアノの内部の金属部で錆が発生し、ピアノの弦にも錆が発生成長します。錆が発生(写真5)すると絃の振動数が変わり、二本弦や三本弦や巻線などの複数弦が狂いだしてしまいます。とても調律で解決できるものではありません。

   
   (写真5:ピアノの弦の錆被害)

 錆びが徐々に成長しますと、いくら調律を頻繁にしても振動数や音色がくるい、気持ちよく演奏ができない状況になってしまいます。この現象は、一般の住宅でも同じことです。楽器や電子楽器や電子機器、さらにはカメラ等の精密機械を結露させないためには、温度変化の少ない、露点を形成しない場所に保管することが必要なのです。
結露発生をさせないためには、温度差をつくらない空間環境管理が先ず必要です。その次に換気(空気が動く)が大切で、露点の出来難い保管場所、室内全体の湿度を下げる状況をつくることです。サントリーホールは大規模な空調装置で、音楽環境の管理をしているのです。この原理は、一般住宅とて同じ手法が取り入れられつつあります。

◆室温23.5℃は音楽温度
1980年以前は、体育館や音楽室に常設ピアノがあり、寒ければ両手を擦りながらの演奏や楽器の演奏をしていた時代でした。当然に、そのころの冬の演奏会開催は少なかったのです。当時の住宅づくりも暖は局所暖房で、断熱材無しが一般的でした。
最近の住宅づくりは、大きく変わりました。我々の住宅内では、吐く息が白くなることもなく、素手を広げて軽く振っても寒く感じることもなく、長くジーッとしていてもかじかむことなく生活できるようになりました。屋内の温度環境は、健康的で快適な暮らしには23℃から24℃に設定していることが大事なことです。
もちろん、音楽を楽しむ暮らしの温度管理の目安は23℃です。その中の暮らしではこまめな暖房器(例えばエアコン)の間欠運転をしないことです。つまり、外出時や不在の時には暖房を切り、帰宅後にまた付けるという運転はしないことです。これではせっかく暖められた室温を下げてしまいます。常に一定の温度、23.5℃での室温維持運転を目指します。留守のときの暖房代が省エネではない、もったいない、というご意見もあるでしょう。しかし、こと楽器(とくにスチールを使った弦楽器など)のメンテナンスには、温度の上下により発生する結露で、錆が出るほうがヤッカイなのです。

◆合理的な暖房機の連続運転
また、いったん冷やされた建物の内面を再度暖めるエネルギー消費のほうが、小さな温度で継続運転するよりも大きいのです。一度冷やすとなかなか温まらずに高温設定をしがちで、一気に元のようには暖かくなりません。床面の温度を上げると、暖房器の種類によっては、むしろ不快に感じることもあります。
連続運転の可能なこれからの住宅のつくり方は、断熱材を適材適所に施工し、断熱性能の悪い開口部も、樹脂や木製サッシのペアガラス&トリプルガラスなどで、できる限り性能を高めておきます。さらに気密性能も高めて、24時間の機械換気も設置する住まいづくりが前提です。気密性能がないと、エネルギーロスばかりか防音対策のない、音の漏れる住まいとなってしまいます。冬の暖房は23℃前後、出来れば20℃以下には室温を下げないで、連続運転します。
音楽を学んだり、楽しむ住まいでは、楽器の保管、音響機器の設置や楽器演奏場所は、露点を形成しない環境づくりを考慮して下さい。いまは、その技術が可能かつ、発揮できる家づくり時代の到来です。もう大切な楽器の音が狂わずに、音の場所と世界を楽しめるのです。

サントリーホールでの演奏を楽しみながら、演奏者や楽器に必要な設定温度、環境管理の取り組みについて体感できました。今後の健康的かつ音楽を楽しむ住まいづくりに、私の報告が役立つことを願って筆をおくことにします。
(2013.12.12)
             

2013年11月21日

ブログ6 省エネ時代の住まいづくり

セントポーリアが咲き誇る住まい
セントポーリアという花をご存知でしょうか?10年ほど前はかなりブームになった室内花です。今回は、このセントポーリアと人をからめた室内環境の温度、採光、通風などと家づくりの関係について、考察してみました。かなり独創的な独断と偏見に満ちた住まい観とお感じになる方もあるやもしれませんが、ブロガーのセントポーリア好きに免じて、ご容赦下さい。
   
   (写真1.開花したセントポーリアの鉢植え)

◆可愛いけれど気難しいセントポーリアの生育環境
 葉の形がハート型でやさしげ。花は端正で美しいながらも可愛らしく、色変化に富んで姿形はコンパクト。次から次へと根元に蕾が生育し、一年中楽しめることが魅力のセントポーリアは、室内花の女王といわれます(写真1)。
 花好きな人なら室内で育てたいと思っても、残念ながら今の季節、花屋さんでは見かけません。花屋さんでは秋口に、このセントポーリアをバーゲンセールの目玉にします。秋の到来とともに店先では気温が下がり、18℃以下になると元気をなくしてしまうことから、商品にならないのです。
 また、セントポーリアは場所に慣れないと育たない性質がある気難し屋で、購入して持ち帰っても、新たな住まいの適温場所によほど条件が合わないと、なかなか店頭にあったような元気は取り戻せません。花芽さえ付けてくれないのです。
生育適温は人の室内快適温度にほぼ近い、18~25℃です。耐寒温度は5℃~7℃で、それ以下の温度では地中の株や根が腐り始め、生存できなくなります。非耐寒性の植物で、5℃以下では枯れてしまいます。冬に開花させるには、18℃から25℃ぐらいが必要です。
 以前のような断熱性能の低く、外気の温度に室温が追随するような住宅では、この可憐な花の健やかな成育はかないません。寒い室内でも育てようとするには、低温に曝さないよう温室を造り、18℃以上の温かさを保って育て、適切な光を浴びせなければなりません。最低でも7℃以上、できれば10℃以上の場所で上手に越冬させることができれば、春に開花し、初夏には葉挿しにより新芽を育てることができます。 シャーレの水に浮かべておけば葉の縁から新芽が育ちます。


◆セントポーリアが無理なく育つ住環境
 我が国の住宅の造り方が、ここ20年余りでかなり変わってきました。2013年改正省エネ基準以上で設計された木造住宅は、室内上下の温度差、隣接する部屋間の温度差が少ない住宅になるよう施工され、図1のような室内床温度20℃以上の住まいができるようになりました。
 
   
   (図1.木造住宅の高断熱高気密住宅の温熱環境)
<どの部屋も、低い温度設定ながら快適で温度差のない暮らしを可能にするのが、これからの断熱改修です。新築では、当たり前に夏涼しく冬温かい屋内環境での暮らしが可能>

 屋内のどの部屋も同じ温度になるには、家の外壁を断熱材で覆い、温度差を少なくするため間仕切り壁を少なし、ドアなどの部屋間の仕切りも少なくします。このようにできる限り屋内の空気の流れを止めないようにしている住宅は、家全体がワンルームのようになり、水平方向の温度差も上下方向の温度差も少ない住宅ができるのです。
 暖房の仕方は、燃焼エネルギーを直接使う採暖方式ではなく、空気中の熱、地中の熱、さらには捨てられる排熱からもヒートポンプ方式で熱エネルギーを取り出して活用する最新の暖房方式と、どんどん技術革新で進化し、高効率化しています。
全館空調設備を完備させ、換気機能を組み込んだ住まいでは、好みの温湿度をコントロールできるシステムも年々完成度が高くなっています。
 ところで、皆さんのお宅は、暖房をいつ頃から使われますか?室温が、床下空間の温度、地中の温度(15℃~23℃)以下になったら、屋内暖房を入れることの目安にしいる住まいも見受けます。
 2013改正省エネ基準で建てられた家は、冬場でもエアコンを室温28℃以上にしなくても、暖かく快適な環境ができます。冬は従来の暖房器の設定温度よりかなり低い20℃~24℃設定温度ぐらいで、快適な暮らしを楽しめます。こんな住宅は、セントポーリアにとっても、最適な温度環境なのです。適温は昼20~25℃、夜は18~20℃程度で、10℃以下にならなければいいのです。


◆セントポーリアの育たなかった住環境のリフォーム
 いまも多くの日本人が当たり前に暮らしている断熱施工の不十分な住宅は、新築当時は温かい住宅だといって借金までして大金をつぎ込んで造っていたものです。(図1)その床下空間は外気温(屋外・戸外温度)と同じでした。冬季になれば室内でも冷蔵庫の中のような10℃以下でした。当然、不適切な暖房での暮らしは結露が発生しやすく、カビの繁殖しやすい住環境になるケースをよく見受けます。
   
   
(図2:65歳以上男性の地域別1日最高気温と総死亡率の関係、本田靖ほか(1998)(1972-1990,沖縄のみ1973-1990)
<この時代(1970年代から1990年代)に造られた木造住宅でも、北海道などの寒冷地では断熱施工が適切であれば室内生活温度が高く、死亡率も低下している>
 

 しかし、今の時代、新築では質の高い住宅を造ることが国策として指導され始めました。これからの住宅は、各設計士や工務店各社の力量に応じた性能が、床下温度として現れます。しかも、写真2のように床下空間以外に、屋内のあらゆる部位で温度・相対湿度などの測定が可能になりました。
 
  

(写真2.省エネで健康住宅の快適な床下環境を測定確認している)
<新築では今風の基礎断熱工法で14℃以上の床下温熱環境を形成し、温かい一階床であることが測定で認められる住宅も出現している>

 スクラップ&ビルドの時代に断熱施工が不十分なまま建てられた住宅でも、事前調査に基づいた適切なリフォームで、冬温かく夏涼しい省エネかつ快適な住環境に生まれ変わります。今後は断熱・耐震などの性能向上と、長期優良住宅並みのリフォームの指針が導入されて、いよいよ2015年度には制度化し、運用されることが明らかになりました。
 既に、2013年改正省エネ基準以上の性能を持って建てられた、冬温かく夏涼しい住まいの室内では、気難しいセントポーリア栽培のために温室を設ける必要はありません。栽培用ガラス製のワーディアンケースも必要なく十分育ちます。セントポーリア好きにとっては、かなりうれしい住環境の効果です。


◆高齢弱者の健康にも配慮した住環境づくり
 ここで言いたいことは、セントポーリア栽培に適する住宅をつくることではありません。住む人がさわやかに快適に住める家づくりを目指しての住環境の在り方が、可憐なセント-ポーリアの生育環境にも適するという一面を、お伝えしているのです。
 我々人の暮らす室温は、冬の寒い時期は23℃以上の生活空間温度を保つことが適切です。それ以下では、環境弱者となる高齢者の特性として、低体温症のリスクが高まります。とくに床が冷たくても、知覚出来ずに素足でも平気です。生活習慣病の糖尿病患者の初期症状でも、この特性が見受けられます。
 一方、夏の暑い時期には、25℃以上の日になると、環境弱者となる高齢者は熱中症発症のリスクが高まります。温熱知覚が鈍感になったり、風が皮膚や神経に障ると言ってエアコンの使用を避けたり嫌がったりする傾向を考えると、生活支援者が暮らし方を工夫してあげたり、住まい方への指導が必要になります。
 これまでの住宅では、外気温が25℃を超えると室内温度は28℃を超えてしまうでしょうから、いくら窓を開け放って通風をとっても、25℃以下には保てません。断熱材を適材適所に施工し、写真3に認められるような輻射熱からの対策を取らなければ、高効率エアコンの装備を稼働させても、効果が認められないのです。近未来に襲来が予想される熱波への対処ができなければ、熱中症による死亡者も増加するでしょう。

  
   (写真3 不適切な断熱施工でのエアコン作動時の室内サーモグラフィー)
<窓の断熱化や屋根や天井の断熱施工が不十分な木造住宅は、天井からの熱輻射のため エアコンを装備しても冷房効果なし。とくに高齢者は自律神経系の失調障害をきたす住まいとなりやすい。植物の生育も望めない室内温熱環境といえる>

 また、人は陽射しを浴びないと、体内時計がリセットされず、自律神経調節が日々うまく働きません。適度な日照を浴びないと骨粗鬆症にもなりやすく、骨折を起こして寝たきりを余儀なくされ、健康寿命を増進できないことになりかねません。外気温が下がっても、屋外での陽射しを浴びながらのスポーツやゲームを楽しむ高齢者は、元気な活動で筋力の衰えを防いでいます。高齢になってもスローランニングなどを実践していると、脚部の筋力の衰えを防ぎ、健康寿命を延ばし、元気ではつらつとした人生を満喫できるのではないでしょうか。

 寒い季節でも温かい住宅では、背中を丸めて炬燵に座ったままテレビを見続けて過ごすなどということなく、家中をのびのび闊歩することで運動量を高め、筋力だけでなく運動神経系の衰えも遅らせることが可能です。戸建ての住まいを求める中高年の住まいでも、屋内で縄跳びなどの複合運動を日々楽しむことができるように、天井の高い吹き抜け空間やトレーニング室を備えることが必要な時代も到来するでしょう。もちろん玄関先の屋外で縄跳びのような軽い運動の出来る配慮でもいいのです。

  

(写真4.冬季でも省エネ健康住宅の屋内で咲き誇るセントポーリア)

 私たちが住む家は、そこに暮らす家族が、健康に暮らすことを提供できるものでなければなりません。セントポーリアが無理なく育成管理できるような住環境は、これからますます増加する高齢者の在宅看護がしやすいことでもあります。セントポーリアと人の長寿は、快適さを伴う健康住宅(10のポイントを実現した省エネ住宅)にて実現できるといえるでしょう。
(2013.11.18)






2013年11月17日

ブログ5 省エネ時代の浴室のあり方

省エネ時代の住まいで、浴室はどうあるべきでしょうか?

(写真1.築40年の木造中古住宅の断熱改修事例)
<断熱改修工事で、どの部屋も明るく快適で温度差のない築40年の中古木造。古い梁組みや趣あるたたずまいなどを生かしながら、耐震性能を付加し現代の安全で健康な暮らしによみがえらせた、薩摩の国・霧島市隼人町から届いた浴室最新事例です。写真提供/施工:鹿児島県・㈱正匠>

省エネ住宅の浴室は健康住宅のバロメータ
◆結露を確認する季節  
今年は夏の暑さがいつまでも続きました。ようやく涼しくなったと思う間もなく、東京では「木枯らし一番」が吹き荒れ。その夜から一気に10℃も外気温が下がりました。
最低気温6℃以下という冷蔵庫並の気温で立冬を迎え、防寒具を身にまとう日々が続いております。立冬は暦通りでした。短い秋がそそくさと通り過ぎ、まもなく冬将軍の到来です。早朝の電車の窓も、地上を走るときには窓ガラスが曇ります。
関東でも北側寄りでは、信越・東北並みに積雪が認められています。日向では小春日和で山茶花が咲き誇り、根元では冬に備えるかのようにスズメなどの小鳥が餌を探し回っているのを認めます。おおむね屋内が16℃台の室温で相対湿度40%を保っている住まいが、一般的ではないでしょうか。そのような住まいで使用中の浴室は、95%の相対湿度でしたら、露点温度は14℃台です。
この時期、ほとんどの家々では、ほぼ水滴状態になった立派な結露が、窓ガラスやサッシ枠材、浴室壁に認められます。みなさんの家ではいかがですか?浴室を出ると、脱衣場の鏡の表面が結露で曇っているのを認めます。浴室から移動するとき、たくさんの水蒸気も一緒に移動しますが、脱衣場の換気を運転していれば、からだを拭い下着を身につける頃には、鏡の結露が徐々に解消していきます。ドアの開け閉めで鏡表面の結露の濃淡が確認できます。しかし、浴室の結露はなかなか消えません。
  
   (写真2 単板ガラスのアルミ製サッシの一般的な浴室窓結露)

◆ホテルの窓ガラスで気づくこと
冬季に、全国各地の都市型ホテルやビジネスホテルで宿泊し、朝のカーテンを開けると窓ガラスに認める水滴が、結露です。小さな空間なので、結露現象がよりあきらかに目視できます。しばらくして解消する結露は、健康的な結露で問題ありません。換気設備が整っており、室内の水蒸気が排気口から室外に排気されて室内水蒸気の量が減少し、露点温度が低くなりますと、結露水が気化して結露が解消します。
室内の換気装置の作動で、室内の湿気として水蒸気が排出されれば、体感できる湿気はなくなり乾燥気味に感じます。この時、やや涼しく感じる鋭い知覚を持たれる方々もいます。住宅の場合も、ホテルの空間容積が大きくなるだけのことです。
浴室の場合もホテルと同じで、室内よりひどい結露現象が起こっています。ホテルでは独立した浴室換気扇が備えられており、どなたも入浴時やトイレ使用時には運転させた経験がありましょう。長時間運転させると、結露がみごとに解消することは、ご経験のことでしょう。

◆しずくのある温泉、ない温泉
温泉地や大衆浴場の湯船に入浴していると、湯気が屋外に面した開口部ガラス面から下降して湯船の湯面を走り、洗い場の床面に向かうのを観察できます。その湯気がさらに室内側の壁面を這い上がり浴室天井面で結露して、♪「天井からポタリとしずくが落ち~て。」となれば「冷てえな♪つめてえ~な♪」と歌にもなる訳です。
冷たいしずくをからだに受けて、汚いなと思ったり感じたことはありませんか。結露のしない温泉は、壁面・天井の表面温度を露点温度以上に高くして、露点を下げているため、結露せず、しずくが発生致しません。湯気のない浴室を自慢にしている温泉旅館やホテルを見かけますが、ここでは室温をかなり上げています。温泉面の水温以上に高温にしているだけのことです。
こうした温度管理の空間は、温泉の温水温度は40℃以下ですから特別危険なことではないのです。結露せず、カビや細菌の繁殖が少なく、衛生管理も行き届いた健康的で快適な温泉空間は、このように設定できるのです。もちろん、脱衣場も休憩室も衛生管理の行き届いたSAPA施設を見受けます。
こうした施設はおおむね換気設備も整っていますし、暖冷房設備を脱衣場・休憩所・睡眠室などにて光・音への配慮も感心するくらい配慮されています。住宅での結露対策も、この露点の解消を考えて設計すれば、結露しにくい浴室が実現できますが、そこまでしなくても、健康的に暮らせます。

◆健康的な結露の浴室は簡単にできる
住宅の浴室の結露をなくすには、浴室壁面の表面温度を露点温度以上にして生活することです。換気装置を稼働し、浴室の水蒸気の量(水蒸気圧)を減らすようにするのです。さらに、壁・窓・天井などの表面温度を上げることも、効果的な解決策です。
住宅での床・壁・天井の素材を結露水や水蒸気の吸着性能や調湿性能の高い素材にすることもあるでしょう。こうした性能がないタイルや樹脂などの素材の場合、換気による排湿機能を高めるようにします。

◆快適な浴室の施工ポイント
外気に直接接する窓などの開口部は、断熱・気密・水密で高性能な開口部にする必要があります。裸になる脱衣場・浴室では、シングルガラスの窓は、使用しないことが健康住宅の必要条件です。
天井・壁・床の断熱性能により、浴室の快適対応が異なります。湯船(浴槽)の断熱性能も含めて、浴室が屋内にあっても住宅の断熱空間にいれているのか、それとも住宅の断熱外の非断熱空間に置かれるのかで異なります。後者の非断熱空間や断熱性能のあまりよくない住宅では、浴槽の温度低下を防ぐために浴槽を断熱材で保温し、洗い場の冷えも防ぎたいのであれば、床の断熱性能を高めます。
建物の断熱性能が改正省エネ基準2013レベル以上であれば、床・浴槽・壁・天井の断熱材充填は、適材適所です。また、給水管には結露防止帯を被覆することです。あるいは、結露防止管を用いておくことです。

◆浴室の効果的な換気
どの場合も、浴室独立換気扇を設置し、室内の入り口ドアの床面ガラリから給気し、外部に排気するのが一般です。この場合、脱衣場の屋内空気を給気に使いますので、外気の冷たい空気を浴室に導入しません。浴室の気密性能は、浴室入口ドア以外の外部窓などでは、しっかりと保たれている必要があります。最近は、シティーホテルのように窓のない浴室を見かけるくらいです。計画換気のためにシステム換気として設置してあるケースもあります。
稼働設定は、連続運転と時間設定運転の選択可能なものがよいです。浴槽に蓋をきちんとして換気装置を連続運転すると、相対湿度が100%の浴室の湿度が2時間で60%に低下し、6~8時間で屋内相対湿度かそれ以下にまで減衰します。湯船の温水を次に使用するまで排水をしないことを提案致します。湯船にお湯があることで、浴室内はほんわかとして温かく、結露はいつの間にか解消し、翌日の使用時にも浴室内側表面が温かく、入浴時の素肌には優しい暖かさが快適で、ヒートショックを起こしにくい温度差の小さい浴室環境が維持されます。

◆高性能省エネ住宅の思わぬ浴室効果
省エネ住宅の浴槽の残り湯は、翌朝までにどのくらい温度が下がるでしょうか。その温度低下の少ない残り湯の温かさに、ほとんどの方がびっくりされます。浴槽温度の下がり方で、住宅の断熱性能が比較できます。
断熱性能の低い浴槽は、底の方が冷たい温水になってしまいますが、地中温度を活かした床下空間を持つ浴室の場合には、2、3℃ぐらいの低下です。浴槽の放出熱で、床下空間や屋内を温めていることになります。 
湯船に蓋をし、換気を連続運転しますと、浴室が乾燥室、洗濯物干場になります。蓋の上に広げても乾燥できますし、乾燥棒を渡すか物干し竿を渡しての乾燥装置をセットしてもいいでしょう。浴室の乾燥状態を確認出来たら、浴室換気を停止させ、脱衣場の換気装置の運転で、浴室換気を代用できます。

◆入浴中こそ換気が大切
入浴中の浴室換気は停止させません。なぜなら、入浴中のからだの代謝の高まりや呼吸の亢進しているときには、浴室換気量を多くしなければなりません。体内への酸素の取り入れを増やし、体外へ呼気中の二酸化炭素と水蒸気の排泄をスムーズにするためです。
すなわち、浴室内の呼気として排出された水蒸気と二酸化炭素の濃度を下げて、吸気で体内に取り込まれて減少した酸素濃度を元に戻しているのです。子供や孫たちとの入浴中に、寒いからと換気を止めるのではなく、むしろ換気量を高めたいものです。子供たちの発育にも役立つ、浴室の空気環境をつくりたいものです。
湿気が少なくて結露水がなくても、浴室内が濡れたままではカビが繁殖しやすいのです。乾燥により、カビの繁殖しにくい浴室環境を常に保てることになります。もちろん換気通風の妨げるようなものを片付けておくことが、無駄な清掃を減らせます。

◆明日への鋭気を養う清潔な浴室
カビ臭い浴室は、換気装置の連続運転をせず締め切った浴室で、必発します。カビが繁殖し、目視できるようでは、ブラシ掛けをしても目地部分に入り込むと汚いカビ痕を残し、不潔で不快なカビ臭さを拭えません。天井近くに黒色酵母菌を主体とするカビを繁殖させない、清潔感にあふれた浴室にて、今日の疲れを癒し鋭気を養い、明日への楽しく希望ある暮らしを支えるに足る、浴室空間にしたいものです。寒い冬、からだを温める入浴は、十分な睡眠を得るために必要なのです。
また、高温で湿度が高い日本の夏。汗を出した一日のからだを清潔に保つためには、この時期こそ入浴が健康に大切です。さもないと、細菌まみれのからだで、細菌繁殖を抑制できません。快適な入浴で、副交感神経の優位な睡眠に適したからだの状態をつくれる暮らしをして、健康を維持しやすいのがこれからの健康住宅であり、その基本となるのが、省エネ住宅(気密・断熱・換気の備わった性能住宅)なのです。

◆築40年の無断熱住宅のリフォーム事例
外気は10℃台か一桁の気温で、冷蔵庫の中の気温になっている季節に、シングルガラスの開口部の浴室だと、温かい浴室空間を整えられないのでヒートショックを起こしやすいです。我が国の家庭内の不慮の事故統計を見ますと、国際比較で浴室内で高齢者に多発していることがよく知られております。
   
   
    (写真3.築40年の中古住宅の浴室、写真1のリフォーム前)

   
     (写真4.築40年の中古住宅北側)

写真1に掲げた「これからの健康住宅の浴室」の断熱改修前の状況が、浴室(写真3)と北側外観(写真4)で認められます。今年が築後40年ですから、1975年という無断熱住宅の経年劣化の少ない事例です。浴室内部でカビの発生による汚れをほとんど認めないのは、排気窓が開口部の上方に設置されており、十分な水蒸気の排出が出来ていたので、この排気効果の必要性を評価できます。
浴室周辺の下地構造材で、腐朽菌による劣化やシロアリ被害を一般には認めますが、この中古住宅ではシングルガラスの開口部でのカビ発生も少なく、下地外壁材劣化やシロアリの生息が認められず、その他構造劣化が少なかったことが、一連の断熱改修した中で確認できたのです。

◆省エネ住宅を目指す6つの改修ポイント
改修では、①床下防湿コンクリートを敷設して、床下土間からの水蒸気侵入を止め、②和室を洋間に変更するときに床に断熱材を施工。③開口部は複層ガラスに変更し、躯体の断熱性能をアップしたのです。④天井断熱施工ではなく、屋根断熱施工にすることで、いままで天井仕上げで隠れていた年代物の梁を見せ表しにし、遮熱工事も加えて、南九州での日射取得量抑制での暑さ対策も付加しました。⑤さらに耐震性能を昨年度の新基準にアップし、耐震補強施工もしています。(写真5,6)
   
    (写真5.和室を洋室に換えた既築40年の中古リフォーム現場)
    
   
    (写真6.既築40年の薩摩の国・隼人町の中古リフォーム後外観)

以上にご紹介したリフォーム事例は、ヒートショックを起こし難い浴室はもちろん、住み慣れたわが家を温度差の少ない新しい省エネ住宅として①開口部高性能化、②高断熱施工、③浴室独立換気設備で実現できることを示しております。九州の鹿児島で寒い季節になっても、今風の施工をした家は、室温が20℃台の自然温度を保てる家なのです。無断熱の浴室を、結露の出来難い現代仕様で温かく快適な浴室に変更できた、好例としてご紹介しました。

◆断熱施工は寒さだけでなく暑さにも効果
この住宅は、寒い冬の季節だけでなく、南九州での暑さ対策を省エネ基準に合わせて施工されており、高性能のエアコンを設置していますので、住まわれるご家族の体感に合わせて23℃から28℃の設定温度で一年間を通して暮らせる住まいに変わっています。これからの家づくりの断熱施工は、省エネでエコロジ―、そして快適な住まいをつくる上で欠かせない、大切な要素であることが、浴室にまつわる例を挙げてお話しました。
いまから私たちが住まう家は、そこに暮らす家族が健康に暮らすことを提供できるものでなければなりません。カビやダニが発育し、繁殖する室内環境から、カビの繁殖しない、ダニの生育できない安全で快適な「健康住宅」のつくり方や住まい方を、これから家づくりを考えている読者の皆様も、もう少し真剣に考えてみてはいかがでしょうか?
(2013.11.15)