誕生と生い立ち

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誕生と生い立ち


はじめに

「健康住宅」の言葉は、いまや大変ありふれてあたり前になった家づくりの象徴として、多くの人々の意識に浸透しています。でも、この言葉がこの協会から誕生したことは、あまり知られておりません。言葉だけが独り歩きをして、「健康住宅」の冠を掲げれば、どんな住宅もそれらしい実態を備えているかのような風潮に、名前を世に出した当協会の親心として、いささか心の痛む思いもないではありません。
 そこで、一般化した「健康住宅」の言葉がどのような状況から誕生し成長して今日に至ったのか、その誕生と生い立ちを簡単にご紹介したいと思います。そのことで、本来の「健康住宅」とそのありかた、当協会の活動や存在を、皆様の家づくりにご活用いただければ幸いです。



「健康住宅」の言葉が世に出た文献

そもそも、住宅に「健康」をうたったはじめての文献は、1966年に時の上田博三課長補佐(前・厚生労働省上田博三健康局長)より発表された、厚生省公害審議会中間答申のなかに認めることができます。答申の要旨は、「健康な居住水準の設定について」として、―良好な居住水準を確保するために、住宅の規模、構造、設備などについて基準を定め、住宅がこの基準を下回らないように指導し、助成することが必要―と解説されています。
 さらに、「健康的な居住水準の具備すべき条件」として、「日照、採光・通風・温湿度・騒音・室内換気などを、衛生学的必要条件として配慮が必要」と踏み込んでいるところは、上田課長補佐が医学的見地から、居住環境の重要性に気づいた視点を世に示しているといえます。このことが、のちのち当協会の健康住宅8つのポイントから現在の10のポイントにつながる観点の大きな足がかりを示した条件といえます。
 また、この答申をもとに、不特定多数の人が使用または利用する建築物を対象とする「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」が昭和45年に制定され、そのおかげで、「建築物が原因となるシックビル症候群などの疾病の発生率が先進国のなかでも極めて少ない成績を収めていることは広く知られているところ」(「厚生省のすすめる健康住宅」厚生省生活衛生局企画課 金井雅利課長補佐より)です。
 その後2007年の当協会総会にて、上田博三氏には環境省環境保健部長として基調講演をお願いし、「環境保健からみた健康な住まい」―住宅内で求められる化学物質対策−と題してお話いただく機会を得るなど、当協会とのご縁を深めていただいております。私たち会員は、ひそかに「上田氏を健康住宅生みの親」として敬い慕うゆえんは、上記のような事実を重視しているからにほかなりません。



はじまりは結露問題から

さて、協会誕生のはじまりはそもそも防露、つまり結露の問題から始まっています。1989年3月、ホテル阪神にて、日本工業新聞社のご協力により、結露防止に関連する5業種(*1)が一同に会して、防露座談会を開催いたしました。このころは、冷暖房機の普及とともに従来の「家は夏を旨とすべし」の自然順応スカスカ住宅から、温熱条件を考慮した部屋の密閉気密化がはじまり、従来の軸組み土壁づくりからプレハブメーカーの規格型住宅が全国に広がっていった時代でした。住宅の着工件数は130、140万戸という時代で、日本の農山村風景から、わらぶき屋根が瞬く間に消えていった時代でもあります。

 ※1:@空調換気扇メーカー(松下精工、三菱電機)
    A断熱材メーカー(東レ、東亜コルク)
    B吸放湿材メーカー(東邦パーライト、神戸不燃板工業、菊水化学工業)
    C測定機器メーカー(神栄、日本工学)
    D透湿板販売(クワザワ)

同時に、住まいの小屋裏・床下・内壁に結露が出はじめ、さらには北海道で寒冷地対策としてつくられた高気密高断熱住宅で、断熱不備による床下・壁内のナミダダケ被害が起こるなど、結露被害への大きな課題が露見した時代でした。先の座談会は、こうした被害に対する各業種の横断的な解決が緊急を要することを物語っています。列席者からは「結露は建物の病気」という持論も展開され、カルチャーショックを得た同会は、結露問題を経験の共有化という土俵に乗せることで、課題解決への前進を目指したのでした。



問題はカビ・ダニに拡大

さらに、同年8月には第2回座談会にて、結露から生じるカビ被害と防除についての具体的実例が披露され、守備範囲はさらに拡大されました。冬季に結露した室内のビニールクロスに、大好物の糊を栄養とするカビが繁殖し、空調機などのカビ発生も話題となるなど、結露被害の深化が懸念されました。
 続く第3回座談会は、翌1990年2月に19社21名の参加となり、カビをえさに繁殖するダニにまで拡大しました。このときの基調報告で大阪府立公衆衛生研究所・吉田政弘主任研究員が「ダニによるアレルギー疾患の発生と住環境」と題して、「室内発生するダニは健康上有害であり、とくにゼンソク、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎に関係する」との発表は、出席者にインパクトを与えました。同主任教授の「ダニの生息条件が25〜30℃、湿度60〜80%」との報告は、結露やカビとともにダニにも最適であることを、改めて確認させられた情報でした。



健康住宅推進協議会の発足

この3回の座談会を経て、結露・カビが建物の病気を引き起こすならば、カビ・ダニは人への病気の原因をなし、どれも条件は同レベルの温湿度で発生することが認識されました。会はほぼ5回を重ね、座談会を脱皮して複合研究、予備調査実施などの必要性を深めると共に、正式な名称を冠そうとの検討も重ねられました。そこで、健康な住宅を推進していく会との意味から「健康住宅推進協議会」に落ち着きましたが、同時期に厚生省が住宅の居住環境向上に向けて「健康リビング」ガイドラインづくりに着手。この会誕生は、時代の要請であることを意識した時期でもあります。1990年8月、当時厚生省生活衛生局・上田博三企画課長補佐を迎え、ホテル阪神にて75人が参集しての発足会が開催されました。
 ここで皆さんはおや?と思われたのではありませんか?検討の上命名された「健康住宅推進協議会」は、現在の日本健康住宅協会の前身です。このころは、ハウスメーカーと大手住宅資材メーカーなどが主要メンバーで、地場に根ざす工務店の参加はほぼ0に近い状況でした。地場工務店も後に入会するようになり、やがて袂を分け、「健康住宅普及協会」が誕生するまで、2年の歳月を要します。このことは、また後ほど詳しく触れたいと思います。
 実質か的活動開始は10月ら、4つの部会(住宅・機器・空気清浄・メンテナンス)を設立しました。そして部会構成メンバーの所有する知識の凹凸をなくすことを目指し、研修会の開催も企画するなど、徐々に活動内容を深めていきました 。



協議会と袂を別ち、兵庫に実験棟を建設

健康住宅推進協議会はその後大手ハウスメーカー主導により、カビの発生した住宅をどのように処理するかの対応に追われ、1992年を迎えました。この頃より、北海道の工務店や地域ビルダーの真摯な研究が功を奏し、住宅内の湿度解消には、高気密・高断熱・計画換気の3セットの重要性が認識され、はじめからカビの生えない住まいづくりが意識的に建設されるようになってきました。また、省エネルギーの観点から、外断熱工法や自然の空気循環システムを活かしたエアサイクル方式の住工法も確立され、躯体内の湿度解消が大きく前進した時期です。
 そうした中小工務店や地域ビルダーは、こうした居住環境の改善策にハウスメーカーに一歩先んじているという自負もあり、大手ハウスメーカーとともに活動する健康住宅推進協議会を離れ、独自の活動を目指そうとしたことはごく自然な成り行きでした。1992年10月に、新たな任意団体・健康住宅普及協会を設立。1993年6月には、兵庫県氷上郡氷上町に1室6畳が3室連棟の実験棟(温湿度調整範囲:20〜30℃、50〜90%RH)を、協会の総力をあげて建設するまでに至りました。健康住宅建設のための調査や、ダニ・虫などの防除試験をこの実験棟で試みるためです。これまでに8社が実験を行ない、3年継続観察。多くの学術研究データとして公表されております。



NPOへの道

その後約9年を経た地道な活動団体は、2001年11月に大阪府認証のNPO法人(特定非営利活動法人)となりました。厚生省より1500万円の補助金助成も得るなど、活動評価も得て研究の深化を目指した当団体でした。しかし、2004年、団体の肥大化に伴った一部助成金の私物化、不明朗会計などが明るみになるなど、無関係の会員や支援者、協力者の期待を裏切った一部関係者の不祥事は、当協会のこれまでの地道な活動の信頼を一挙に揺るがした汚点として、記憶に新しい出来事となりました。しかし、現在はこの不幸な過去の清算を残った会員が一致団結し、メスを入れて粛清に臨み、2005年10月、新たな出発と再生を期して、大阪より東京に事務所を移転いたしました。そうして健康度8つのポイント(結露・カビ、ダニ、床下環境、過乾燥、省エネ(断熱気密)、換気、音環境、高齢者対応)から新たな10のポイントを掲げ、会員一同、協会理念に基づいた住まいづくりに邁進しています。



健康度のポイントは10

時代は少子高齢社会となり、新たな観点から住まいの健康度を見直す必要が求められています。その追加となった新たなポイントが、耐震精密診断とユニバーサルデザインハウスの2つです。阪神淡路大震災以後、地震国の宿命を真摯に受け止め、建てる家がどのくらいの地震に対してどのくらいまで傾くかをビジュアルに確認できるソフト・家守殿を開発し、より確実性の高い安心をご提供しております。また、ユニバーサルデザインハウスは、高齢者対応をより前進させ、幼児から高齢者、障害者にまで広く誰にでも優しい住まいのチェック項目を業界初で作成し、チェックシートとしてまとめました。安心の家づくりとして、のちのちリフォームなどに煩わされず、長く住み続けられるようにはじめから意図した家づくりが可能です。
 これらのポイントは、科学的なデータできちんと数値化できる健康住宅認定制度として設け、ご希望のユーザー様には、認定証が発行されます。この認定証が、のちのちの住み替え時や売買の際に「住まいの評価書」として威力を発揮し、住まいが資産価値になる布石となるものです。
 その手始めに、いまは住宅内の空気質を測定する「室内空気質環境検査」を徹底し、ご入居前の室内空気質に対する安心・安全を実施。現在までに全国約600軒分の認定証が発行され、ユーザー様に喜ばれております。



新工法「柱表わし外断熱工法」

これからの環境時代には、住まいはできるだけ省エネ性能、高耐久性が求められます。でも、高齢者の増加で、快適性も重要な要素です。過去の隙間風が出入りする住まいづくりでは、エネルギーの損失ばかりでなく、各室ごと、また室内上下温度差の発生で、人の健康にとって大変ストレスの多い環境となってしまいます。当協会は、この観点から住まいづくりを根本から見直し、「柱表わし外断熱工法」を開発し、普及に努めてまいります。
 これは、従来イニシャルコストの高い高気密高断熱計画換気という3条件をクリアした上に、一般生活者に良質な住環境を提供したいという会員の願いが生かされた新工法です。良質な工法に、先に述べた10のポイントを考慮して良質な住まいづくりをすることは、長く住み続けられランニングコストのかからない高耐久住宅として、生活者の皆様に高い支持を受けるものと存じます。



東日本大震災より住まいの価値観に変化

2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故発生により、省エネに節電、長期の使用に耐えうる耐久性が尊ばれております。こうした現況のなか、今年度からは耐久性を左右するシロアリ対策を主要テーマに、健康住宅の再検証を進めております。
 当協会は2009年から、古くて新しいこのテーマに注目し、独自の研究会を重ねてまいりました。今年ようやく(社)日本木材保存協会から認定されたホウ酸化合物使用を含む、シロアリ被害予防工法の開発と普及を重視し、最新活動に加えてまいります。その目指すところは、実測データの検証に基づいた「健康住宅」を実践できる、全国のコミュニティビルダー育成と、さらに広くは生活者への普及や住環境向上に寄与していくことを活動使命としております。